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第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース②*

「抜くぞ」  栓のようになっていたノズルが、ゆっくりと抜けてゆく。一緒に、庄助の体温に馴染んだ中の湯も、とぷとぷと溢れる。 「おぁ……っ、イ……っひぃぃ!」  一気に出すのは、あまりにはしたないから嫌なのに、湯がたまってやや膨らんでいる下腹を、景虎の手が優しく圧迫してくる。庄助は拒んだが、相変わらず身体に力が入らなかった。 「や、押すな……! やめっ、おねが、い」 「出せ、大丈夫だから」  何が大丈夫やねんアホ。  ピンクとブルーがまだらにうねる瞼の裏で、庄助の、かすかな理性が毒づいた。  もう心も身体も制御を失いつつあるのに、こんな時に大丈夫なんて言われたら、その言葉に安心してしまったら。  感情のダムが決壊したら、戻ってこられなくなる。自分じゃなくなる。そうなった時に景虎は、今と変わらず愛してくれるのか。そもそも自分を自分たらしめるものとは、景虎との、境界線とは…… 「お前の……庄助の、全部が好きだ」 「あ……」  囁かれて、耳にキスをされて、ついに力が抜けた。さっきの頬へのキスと同じ、景虎の唇が触れたところから、鳥肌が急速に全身に広がって、気持ちいいのが止まらなくなる。 「きゅっ……うう、あっ、や、うぁあ~~っ!」  体の奥から湯を溢れさせながら、庄助は絶頂した。喉から獣みたいな声が出て、庄助は理解する。普段いかに、理性が声を押しとどめていたのかを。 「かげっ、カっ、んお゛……っ! んんぅ、んひ、い゛~~っ! あぁあ゛っ」  皮が剥がれる。庄助を繋ぎ止めていた、人間という化けの皮が。そういう意図で触れられていないのに、くっついただけで浅ましく射精までして。  薬のせいだとしても、もう剥き出しのまま抱かれていたいと思うほどに、強烈な快楽だった。 「おっあっ……はあっ、ゥ……」  全て出し切って、腹がぺたんこになっても、庄助の息はなかなか整わなかった。ゾワゾワと微細な性感の波がなかなか引かない。景虎の胸に頭を預けて、庄助は心臓の音を間近で聞き、その色を脳で見ていた。 「よく頑張ったな。あとは、はやく薬が抜けるように水分を摂って……その間、一緒に起きてる。お前が楽になるまで、ちゃんと見てる」  景虎の声が骨から直に伝わる。音として響く低音の心地よさに、背骨がゾクッと震える。  いつもだったら、簡単にイってしまったことを揶揄して楽しんだりするのに、さすがに今日は優しい。薬のせいとはいえ、庄助は自分だけその気になってしまっているようで恥ずかしくなった。  あやすように背中をトントンされるだけで、振動でまた気持ちよくなってしまう。逃げるように身を捩った先、景虎の下腹部が庄助の腹に触れる。 「んえ……」  庄助は二度見した。景虎の男性器が、天を向いてそそり立っていたからだ。  太い幹には血管が走り、まるで熱を隠しきれない凶器のようにそこにあった。視線に気づいた景虎は、少し申し訳なさそうに言った。 「すまない。これは……お前が動物みたいにキャンキャン鳴きわめくのが可愛くて、つい」 「きゃんきゃん……」 「大丈夫だ。ほら、髪も洗うぞ」  庄助は、目を逸らせなかった。いつもよりずっと、なんだか、それが、それというより景虎が、可愛く思えてしまって。  だって、俺のこと見てバキバキに興奮してる。  いつもやったら、嫌がるふりまで見透かして散々からかってくるくせに、今は我慢してるとか……。  身体の内側から溢れてくる気持ちが、薬効で盛り上げられているのは、理屈でわかる。それでもなお愛おしい。  景虎の傷に触れないように、庄助はまた裸の身体を寄せた。顔を上げて、景虎の頬に口づける。 「庄助……」  軽く鼻先に噛み付いてから、庄助は熱にうかされたように、小さな声で言った。 「……チューしよ、カゲ」  それは、悪魔の囁きだった。 「ばか、お前な……」 「お願い、チューだけ」  湯気の向こうで、景虎が困ったように眉根を寄せている。  柔らかくて温かい悪魔の唇が、ともに手を取り地獄の道行きを歩もうと、景虎を誘っていた。

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