425 / 432
第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース③*
初めてのキスは、景虎が庄助から不意打ちで強引に奪ったものだった。
午後の陽が少しずつ傾きはじめた頃。景虎の部屋で無理矢理そのまま、身体まで奪った。
あれから何度もキスをした。身体を重ねるたびに、それ以外のタイミングでも。
「カゲ……はぷ、んんん……」
ベッドの中、濡れた髪のままの庄助に口づける。最初は触れるだけのそれが、深くなるのに時間はかからない。
最初の頃こそ、男と喜んでキスなんてできるはずないと拒んでいた庄助だが、いつの間にか受け入れるようになり、こうして自らねだるまでになった。
いやらしく躾けたのは他でもない景虎だが、普段あどけない庄助が見せる痴態は、なんというか、心配になるほど艶っぽい。こんな表情を他の誰かに見せるくらいなら、この場で食い殺したい。いつもそう思ってしまう。
「……チューだけだろ」
冷えた空調の中、タオルケットの下で抱きしめ合う身体は温かい。景虎の腹筋に、庄助の熱く硬くなったものが当たっている。
「カゲこそ……ガチガチにしてる、くせに……っあ、はあっ、ぷぁ」
お互いのペニスは濡れて、二人の肌の間で糸を引く。景虎がキスしかしないのがもどかしいのか、庄助はくねくねと腰を蠢かせている。
「ん、んっ、は……でかい……ってお前の」
キスの合間に庄助は、自分の下腹に当たる景虎のものをチラリと見た。臍の下まで届く長さと太さに怯えるような、しかしそれと同時に欲情しているような蕩けた目を向けた。
「我慢しろ」
下唇を軽く吸い上げると、庄助の身体が跳ねた。甘くちいさな絶頂が積み重なって、脳も下半身もどろどろなのに、決定打がない。
ベッドの中でキスをするだけの、まるで中学生みたいな愛情の受け渡しに、景虎も庄助も欲望を持て余しながら、しかし先には進めないでいた。
「か……カゲってよぉ」
「なんだ」
「ちゃんと我慢できるんやん。……セックスしたいの」
「当たり前だろ、なんだと思ってるんだ? 人を猿みたいに」
「いつも我慢できてへんから言うてんやろが、アホっ! ……っふ、へへ……へへへっ」
庄助は笑った。やはり妙なテンションだったが、シャワー室で身体を洗っていた時よりは、随分落ち着いてきたように見える。
こういった薬は、効きはじめと抜け際がいちばん不安定になる。そのことを、景虎はよく知っていた。なんとか、最初の山は越えたのかもしれない。
「ごめんな」
笑っていたと思ったら、突然真剣な声が聞こえた。景虎はそっと、庄助の潤んだ目を見た。
「変な薬でパキっておかしなってもーて……ごめん。張り切りすぎて、またひとりでいらんことして、ごめん」
「……もういい。お前が生きてるなら……今はそれでいい」
うん、と小さな返事をして、庄助は景虎の胸に、頬を擦り付けた。カゲの匂いがする、きもちええ。鼻にかかったうわ言のような言葉に、胸が高鳴る。
ともだちにシェアしよう!

