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第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース③*

 初めてのキスは、景虎が庄助から不意打ちで強引に奪ったものだった。  午後の陽が少しずつ傾きはじめた頃。景虎の部屋で無理矢理そのまま、身体まで奪った。  あれから何度もキスをした。身体を重ねるたびに、それ以外のタイミングでも。 「カゲ……はぷ、んんん……」  ベッドの中、濡れた髪のままの庄助に口づける。最初は触れるだけのそれが、深くなるのに時間はかからない。  最初の頃こそ、男と喜んでキスなんてできるはずないと拒んでいた庄助だが、いつの間にか受け入れるようになり、こうして自らねだるまでになった。  いやらしく躾けたのは他でもない景虎だが、普段あどけない庄助が見せる痴態は、なんというか、心配になるほど艶っぽい。こんな表情を他の誰かに見せるくらいなら、この場で食い殺したい。いつもそう思ってしまう。 「……チューだけだろ」  冷えた空調の中、タオルケットの下で抱きしめ合う身体は温かい。景虎の腹筋に、庄助の熱く硬くなったものが当たっている。 「カゲこそ……ガチガチにしてる、くせに……っあ、はあっ、ぷぁ」  お互いのペニスは濡れて、二人の肌の間で糸を引く。景虎がキスしかしないのがもどかしいのか、庄助はくねくねと腰を蠢かせている。 「ん、んっ、は……でかい……ってお前の」  キスの合間に庄助は、自分の下腹に当たる景虎のものをチラリと見た。臍の下まで届く長さと太さに怯えるような、しかしそれと同時に欲情しているような蕩けた目を向けた。 「我慢しろ」  下唇を軽く吸い上げると、庄助の身体が跳ねた。甘くちいさな絶頂が積み重なって、脳も下半身もどろどろなのに、決定打がない。  ベッドの中でキスをするだけの、まるで中学生みたいな愛情の受け渡しに、景虎も庄助も欲望を持て余しながら、しかし先には進めないでいた。 「か……カゲってよぉ」 「なんだ」 「ちゃんと我慢できるんやん。……セックスしたいの」 「当たり前だろ、なんだと思ってるんだ? 人を猿みたいに」 「いつも我慢できてへんから言うてんやろが、アホっ! ……っふ、へへ……へへへっ」  庄助は笑った。やはり妙なテンションだったが、シャワー室で身体を洗っていた時よりは、随分落ち着いてきたように見える。  こういった薬は、効きはじめと抜け際がいちばん不安定になる。そのことを、景虎はよく知っていた。なんとか、最初の山は越えたのかもしれない。 「ごめんな」  笑っていたと思ったら、突然真剣な声が聞こえた。景虎はそっと、庄助の潤んだ目を見た。 「変な薬でパキっておかしなってもーて……ごめん。張り切りすぎて、またひとりでいらんことして、ごめん」 「……もういい。お前が生きてるなら……今はそれでいい」  うん、と小さな返事をして、庄助は景虎の胸に、頬を擦り付けた。カゲの匂いがする、きもちええ。鼻にかかったうわ言のような言葉に、胸が高鳴る。

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