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第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース④*
本当は、言いたいことがいっぱいある。もちろん、勝手な行動をして危険な目に遭ったことを責めたいし、反省しろとも言いたい。それと、庄助が成した事も褒めてやりたい、自分が過去に打ち克って帰ってきたこと、もう心配ないということも、伝えたい。
でも今の景虎には、それらを上手く語る言葉が見つからなかった。庄助が可愛くて、愛おしくて、そこにいてくれることが嬉しい。今、心が全力で喜びに震える、そのこと以外に割くリソースは無いように思えた。
「ん、んぅ……」
どちらからともなくまた、口づけた。薬で乾きがちな庄助の口の中を潤すように、唾液を分け与える。温いそれを遠慮がちに、しかし嫌がらずに飲み込むのが、とてもいやらしい。
「カゲにチューされたら、目ン中チカチカする……あったかい、きれい……」
「……だいぶ効いてるな、もうやめるか?」
「ううん。やめへん」
チロチロと、庄助の舌が唇をなぞる。いつまでたっても拙くて可愛い愛撫に、思わず笑いそうになる。庄助はムッとしたような顔をして、景虎をベッドに押さえつけると、体液でぬめる腹の上に跨った。
「こら、襲うな」
「ええやんけ、前の仕返し……」
頼りない常夜灯の光を背に、庄助の裸体が浮かび上がる。薄いタオルケットが健康的な肉付きに絡んで、何か見知らぬ不思議な生き物のシルエットのようだった。
「仕返し? 何のだ……んっ」
心当たりがありすぎて思いつかない。景虎の唇に、庄助が軽く噛みついた。
「だいぶ前、一緒に住んですぐくらいの時。お前『キスだけさせろ』とか言うて……めっちゃチューしてきてそのまんま……俺のこと放置して国枝さんと飲みに行ったやんけ。俺は忘れてへんぞ」
確かに、そんなこともあった気がする。
不思議だ、庄助との日々は、全部覚えておきたいくらいかけがえがないはずなのに、もっと楽しいことや大きなイベントに上書きされてゆく。景虎は、とても贅沢だと思った。幸せも衝突も、二人の間に蓄積して忘れてゆくことが。
「せやから、これは……仕返し。チューだけ、やねんから……あふっ」
浅めのキスを何度も降らせながら、庄助は尻のあわいに、景虎の屹立を塗りつけるように腰を動かした。まるきり、発情期の猫みたいだ。
「ふやぁ……っ」
庄助の腰を支えた掌に力が入り、つい下から押しつけてしまいそうになる。寸前で止めたのに、それだけで庄助はビクンと身体を強張らせ、感じ入ったような熱い息を漏らした。
「……っ、あんまりやらしい真似するな。ほら、するんだろ? キス」
「ぅう゛~っ、ふにゃあ……」
触れるだけで、こんなすぐトロトロになってしまうのに、こんな状態でもし挿入なんてしたら、どうにかなってしまうに違いない。
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