427 / 432
第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース⑤*
「ちゅ、……チューだけ……んんっ、はぁ」
景虎の頬に、耳に、髪を掻き分けて額に。切ない吐息とともに口づけてくる。体重を支える手の動きで、庄助はまた苦しげに甘い声を上げる。
「……あは、あっ……ふン……」
ものも言わず、唇をくっつけては離す。腹の上に垂れる透明な体液が、糸を引く。お互いにこんなに欲しいのに、最後の一線だけが二人を繋ぎ止めている。
不意に、耳たぶを齧られた。そのお返しとばかりに、景虎も庄助の首筋を軽く噛んだ。その一回のいたずら心が、甘美な膠着状態に風穴を開けた。
「っ、うああ……! や、あ゛っ、あんん……!」
景虎の腹筋や臍のくぼみに、庄助は温い精を吐き出す。焦らされまくった身体は、ようやく与えられた強い刺激に飛びついてしまう。
「……ぁ、あゥっ、ふへ……ぇ」
射精してもなお辛そうに、庄助は景虎の上で腰をくねらせる。景虎のペニスに尻と陰嚢を押し付けてはたまに正気に戻り、首を横に振っている。
「庄助……」
「う、んっ……からだ、やらしいの、おさまらん……ごめん、ごめんカゲ」
強すぎる性感と覚醒作用による知覚異常で、欲情することにすら疲弊した庄助は、泣いていた。
「嫌いにならんとって……」
二度目のその言葉に、景虎は身体を起こし、庄助の冷えた肩に触れた。
「それは俺の台詞だ」
「……んえ……?」
「お前が薬で弱ってるのに、俺は欲情してる。本当は全身、触って、舐めてドロドロにしてやりたい。ケツに突っ込んで、煽ったぶんだけ泣かせてやりたいんだ」
頬を寄せて囁くと、庄助の耳がどんどん真っ赤になってゆく。
「……俺のこと、嫌いになるか?」
景虎の声が鼓膜を揺るがすたびに、庄助の肩に鳥肌が立った。恥ずかしそうに首をゆっくり横に振り、精一杯とばかりに声を出す。
「きら、いに……ならん」
「だったら、俺も同じ気持ちだ」
庄助は顔を上げると、景虎の顔をまっすぐに見た。相変わらず瞳孔は開いていたが、目の奥には確かに力があった。
「なあ、からだ、触ってほしい……し、カゲに触りたい」
キスだけでは足りない。それは景虎も同じだった。けれどこの先に進むための、もうほんの少しの距離。それを詰めてゆくための言葉を考えるわずかな沈黙の間に、カーテンの向こうで風がごうごうと唸りを上げた。
「薬のせいだ、庄助。そうだろ?」
庄助は、纏っていたタオルケットをベッドに落とした。肌を滑る摩擦に、ふるりと身体を震わせる。
「……薬のせいでも、そうやのうても。俺はカゲに触ってほしい……あかん?」
まつ毛を伏せるいじらしさに、思わず手が伸びる。顎を持ち上げてもう一度、庄助の茶色い目を見て言った。
「あかんわけないだろ」
言葉ごと塞ぐように、景虎は庄助の唇をまた奪う。舌先に噛みつき口内から引き出すと、味わうように舌全体をしゃぶった。
「ふぁ、ふ、う……ン! ふぉ、ゔ、はう」
喰い尽くすみたいな本気のキスだ。庄助は驚き身を固くしたが、唾液の音の淫靡さに瞬く間に陶酔してゆく。
「……庄助が薬を入れられたそもそもの原因は俺で……お前をこんな身体にしたのも俺だ。責任は取る」
くっついた胸と胸の間で、ばくばくと混ざる鼓動がやかましかった。
「キツかったらちゃんと言え。言われたら止まる。……でも、手加減できるかはわからない」
そう切実な声で景虎が言ったので、庄助は腹の奥を疼かせたまま頷き、目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!

