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第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース⑥*
肌に触れる空気が湿り気を帯びていて、それが部屋中を包み込んだら、この部屋は海になる。とぷんとぷんと揺れる、心地よい水音。
外はまだ雨なんだから、しばらくここに隠れていよう。二人きり、誰にも邪魔されない巣穴の中から、嵐を覗き見てはしゃぐみたいに。
汗をかいて、喉が渇いて、二人で一つのペットボトルで水を飲んだ。景虎が水を飲み、喉仏が動く。自分にも同じものがあるのに、庄助はその光景にいつもドキドキしている。
いたわるような触れ方をする大きな手が、逃げても逃げても追いかけてくる。
「……ぁ、あ……っ!」
優しく捕まえられ、そっと暴かれるたび、庄助はシーツの上で、魚のようにビクビクと身体を泳がせた。
愛撫だけで何度果てただろうか。もう出るものはないくらいだし、実際に男性器は萎れているのに、それでも絶頂のたびに飢えてゆくみたいで、まるで際限がない。
過敏すぎて、空気の揺らぎさえ怖かった先ほどとは変わって、心は落ち着いている。なのに、景虎に触れられた箇所は、新しく神経の根が張ったみたいに、どんどん敏感になってゆく。
「イ……ひっ、んぅ、う゛う……ぁあ、あ」
もう息も絶え絶えだ。ゾンビみたいな喘ぎ声に、庄助は自分で笑ってしまいそうになった。
逃げるように躙り上がったベッドの隅、気づけば景虎の大きな手が、後ろから庄助の腰を掴んでいる。濡れたうなじに低い声が落ちてくる。
「挿れてもいいのか」
尻の丸みを撫でられて、むずかるような声が鼻から漏れる。さっきまで景虎の指で何度も開かれていた場所は、まだじんじんと脈を打ち、ローションを滴らせていた。
自分から誘ったのにも関わらず、敏感になった内臓を、今から景虎の熱でこじ開けられるのかと思うと、緊張で心臓が痛い。
「うん……」
景虎とセックスがしたかった。薬のせいもあるけれど、それ以上に。お互いが生きていて、身体に触れられることが嬉しかった。
男同士なのに。などというのは今さらだけれど、不思議なくらい自然に、庄助は身も心も景虎を求めている。
「う、ぐ……っ!」
後ろから押し当てられ、奥へ向かって重みがかかる圧迫感に、息が詰まる。
「……無理するなよ、いつでもやめていい」
「アホ……ぉ、優しくすんな、キショいんじゃ……っボケ」
悪態をつく元気が出てきた、というわけではない。だけどこれくらい言わないと、今日の景虎は遠慮してしまいそうだから。
怖いけど、受け止めてほしいし、受け止めたい。別の日じゃなくて今、この瞬間に景虎が欲しい。薬なんかに邪魔されたくない。
今まで自分の気持ちをちゃんと伝えないまま、身体だけを重ねてきた。好きだと言い続けてくれている景虎に対して、自分はなんて臆病で卑怯なんだと思う。
せやから、薬が抜けたらちゃんと俺も―
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