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第五幕 十、メルティ・メルティ・ユニバース⑧*

「あうう~っ……あ、あ……っおぎゅ……」  視界が星のきらめきいっぱいになる。超新星ははじけて星が死を迎え、また別の場所で新たな生命が生まれる。 「庄助……? 意識トんでないか」 「はひ、っ……うちゅ、宇宙、すごぃ……んぁ、あっ……う、あええ……」  目を閉じて、瞼の裏の宇宙を堪能する。そんなに詳しいわけでもないのに、なぜか何でも手に取るように解る気がする。  庄助がエウロパに着地すると、白いウサギが居た。よく見るとそれはウサギではなく、毛の生えたイカのような生き物だった。長い耳に見えていたものは二本の触手で、耳と耳の間にある口吻には、ごく繊細な毛のような毒針が生えている。触手が、薄桃色の羽を持つ大きな虫を、絡めるように捕らえた。静かな宇宙空間に、うまい棒を食うような、思っていたより軽い咀嚼音が響く。宇宙の虫って、全然身ィ詰まってへんねんな、重力がないから? あれ? 宇宙て、音聞こえるんやっけ……などと考えながら、庄助は食物連鎖を間近で見ていた。 「んぁ……宇宙て普通に……どうぶつ、おるやんか……はわ……っあ」  呆れたような景虎の吐息が、遠くベテルギウスの裏側から聞こえた気がした瞬間、庄助の腹の中で十分に膨らんだ剛直が、ゴリゴリと無遠慮に肉壁を抉った。 「ふぎゃあっ!?」  暴力的なまでの強い快感に、庄助は一気に現実に引き戻された。それまでは優しく腰を使っていたはずの景虎が、怒ったような表情で、激しく腰を叩きつけてきている。 「えっ、やっ……カゲっ! あ゛! なっ、うぐ、そ、んなっ、急に……ィ゛っ!?」 「セックスしてるときに、宇宙のこと考えるのは浮気だろ」  そんな、めちゃくちゃな。  よほど言いたかったが、景虎の動きに合わせて、途切れ途切れの悲鳴が喉から漏れるだけだった。 「何が宇宙だバカ。お前今、誰に抱かれてる? 誰のチンポでよがってるんだ?」  本気で苛立っているような声だ。遠慮のないピストンに、庄助は絶頂したまま戻ってこられなくなる。 「あぁあ、カゲぇっ、カゲのやからぁ~! ああはぁっ、ごめんて、はげし……ふぎゅっ! あっあ゛っ……! やめ、またいぎゅ、いくって……!」 「俺のことだけ見てろ」  目を開いた瞬間、庄助の偽物のコスモは、たったそれだけの言葉で、一気に滅んでしまった。だって、薬物が見せたどんな綺麗な光や色よりも、景虎の唇や流れる汗のほうが、美しかったから。  庄助は、途方も無い安心感に包まれた。  どんなおかしな薬でぶっ飛ぼうと、世界の果てに居ようとも、景虎の声と手のひらが、きっと彼の元へ引き寄せてくれる。そんな確信があった。 「……ぁ、あ」  いまや星々は潰え、目の前には薄暗く殺風景な部屋が広がるのみだ。  怪我をした身体のあちこちは痛いし、景虎のペニスが根元まで埋まった下腹部も鈍く痛い。でも、よかった。それが幸せだった。  刺青の肩が、庄助の片方の足を抱え上げている。刺されて傷ついた虎の和彫りが、熱い肌の下に息づいていた。それを見るだけで、命の音が聞こえる。 「きもちいい、あ゛、はぁあっ……カゲぇ~~……」  ただ、景虎の肌や匂いや体液に、満たされているのが幸せだった。  境界線なんかなくなって、二人で一つに。  それも幸せかもしらんけど、やっぱ俺はお前と別々がいい。  だってチューしたりくっついたり、お前の感じたこと、楽しかったとか悲しかったとか、そういうのを俺も隣で見てみたい。  俺に夢中なカゲの顔、ずっと見てたいやん。 「このまま中に……掻き出せないくらい奥に、出していいか?」  上擦った声で景虎が問う。庄助は何度も頷いた。本当は、きつくしがみつきたかったけれど、必死でシーツを掴んで堪えた。 「んぐ……ぅ! はぉ……っ」  連なるひだの奥、ギュッと狭まって侵入を拒む、越えると結腸に達する曲がり角。そこに半ば押し入るように固くなった亀頭を当てて、景虎は射精した。 「ん……庄助……っ」  内臓に直に、ぶちまけられる。体温より少し温い精液が、腹の奥の奥に満ちる。  目を閉じてももう、宇宙は帰ってこなかった。その代わりに、深い深い安らぎと愛おしさがあった。  庄助は沈みこむ意識の中、反芻した。  景虎のことが、好きだ、と。

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