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【番外編】しょこら姫と、反社のプリンスさまっ!☆ぼ〜なすとらっく★①

 くてくてに酔った庄助を担ぎ、景虎がアパートに戻ったのは日が変わる一時間ほど前だった。  自分からは動かない庄助を、支え、立たせ、脱がせ、シャワーで髪と身体を洗い、またパジャマを着せる。介護か育児のような一連に、さすがの景虎もどっと疲れた。  整えたソファベッドに腰から下ろしてやると、庄助は景虎の肩に腕を回したまま、顔をしげしげと見つめた。  シャワーを浴びたてのしっとりとした肌から、まだ濃くアルコールの香りが立ちのぼる。そっと身体を離すと、庄助が舌っ足らずな声を上げた。 「おい、どこ行くねん」  ろれつが回っていないのも無理はない。先ほどの誕生パーティではかなり飲んだ。景虎はほぼシラフだったが。  贅沢三昧のバカ騒ぎの延長で、タクシーで帰る道すがら、景虎の肩にもたれてぐうぐう眠っていたのに、目が覚めてなお、庄助は酔っ払っているようだ。 「先に寝ろ。俺もシャワーを浴びてくるから」  景虎は、首元の窮屈なネクタイを緩めた。スーツこそ脱いだが、ズボンもシャツも借り物だ。庄助を洗った際に、だいぶ濡れてしまった。 「ほ〜ん? 姫を置いていくんやな?」 「……は?」  景虎が片眉を上げると、庄助は生意気そうな笑顔を見せた。 「家に帰るまでが遠足で、俺が寝るまでが誕生日やねんで。本日の主役に対して、冷たいもんやな、王子様〜?」  緩んだ口元に、健康的な白い犬歯が見える。全く安っぽい挑発だ。腹が立つ。  今日は怒らないように努めてきた。飲んで楽しくなって、よく知らないホストの男と楽しそうに談笑し、肩や腰を抱かれて写真まで撮っていたこと。皆の前で、いつか立派なヤクザになると豪語していたこと。ひとまずは全部飲み込んだ。  それもこれも、他ならぬ庄助の誕生日だから。  日々の自分の説得が全く響いていないことに、全身の力が抜ける思いだったというのに、耐えた。しかし。 「何黙っとんねんアホ。つーか、お前さっきなんや小言言うとったよな? もっぺん言うてみろや〜ほれほれ」  庄助は両手を伸ばし景虎の頬をつねると、ぐにぐにと無遠慮に引っ張り回した。庄助は酔っ払うと気が大きくなるタイプだが、今日はそれに加えて、えらく絡み酒だ。景虎は無表情のまま、長く息をついた。  今ここで服をむしり取って、いつものように抱き潰して黙らせることもできる。そうすれば、庄助はしばらくは反省するだろう。  しかし、毎回それでは芸がない。それに、大人しく嵐が過ぎるのを待てばなんとかなると学習させるのはよくない。何よりこいつは、放っておくといい気になってどこまでもつけあがる。今日はそれがよくわかった。 「えらく口の悪い姫だな」 「アホ、令和のプリンセスはなぁ、王子より強いって相場が決まっとんねん」  ふざけているのかなんなのか、庄助は姫と呼ばれるのがまんざらではないようだ。ホストクラブで言う姫とは、要するに客の女のことだ。それ以上でも以下でもない。だが、庄助が気に入っているなら、水を差すこともないだろう。 「飲みすぎだ」 「それは……そう」 「もう寝ろ」 「……いやや。まだ寝たないねんもん」  アルコールに蕩けた目の奥が、じっとりと濡れている。かまってほしいのに素直に言えない庄助は、とても可愛い。可愛くて、憎らしい。  景虎は庄助の頬に唇を寄せ、さっきのホストクラブの時と同じように、もう一度囁いた。 「俺だけの、姫」  あ……、と庄助が小さく呻く。酒気を帯びる耳の裏から首筋の肌に、ぷつぷつと鳥肌が立っている。  手を取り、きめの細かい甲に口づけた。  小さい時アニメで見たおとぎ話の王子のように、とびきり低く甘い声で、景虎は言った。 「王子様なら、姫の願いを叶えなくちゃな」

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