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At the gymnasium storeroom 体育館裏の倉庫6※
「も、う、良いよ、周央。げん、かいだっ」
「えっ」
口を離して顔を上げた周央は、可哀想なくらい真っ青になった。俺は、その頬を両手で挟み、軽くキスをする。
「違う、そうじゃなくて。もう入れるの待てないって意味」
俺は周央の腕を掴んでベッドに押し倒し、白くて美しい身体を見下ろす。ただそれだけで、心拍数が上がる。周央は表情を強張らせたまま、顔を身体ごと横に向けた。
「僕の姿見て、萎えない?」
「意味分かんねー。萎えなさすぎて逆に痛くて辛すぎて死にそうなのに」
こんなにエロくて綺麗で可愛い過ぎる周央を前にして、萎えるわけがない。
俺は、周央の腰を持ち上げ、四つん這いの状態にする。男同士のセックスの仕方なんて、聞いたところでいつ使うんだと笑い飛ばした合宿を思い出した。覚えておいて良かった。
俺は、液体がとろとろと滴る穴に、先の方を押しつけた。
「いっ……!!」
「っ、大丈夫か?」
「う、ん」
たぶん、周央も初めてなのだと思う。解してきたらしいが、窄まった穴はきつい。
俺は、再び亀頭を押し進める。なるべくそっとやっているつもりだが、周央はやはり痛いらしい、手近にあったクッションを掴んで引き寄せ顔を埋め、堪えている。時折唸り声が漏れる。気のせいだろうか、声が泣いているようにも聞こえる。
ゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせる。狭く閉じようとする入り口に、少しずつでも先端を進入させようと、押し込んでは止まり、押し込んでは止まる、を繰り返す。男同士の最初の時は、そうやって馴染ませるものだと誰かが話していた。
これがなかなか難しい。時間をかけて進まなければという理性と、欲望のまま腰を振ってしまいたいという衝動の狭間。
そのバランスが、すぐにも崩れそうだ。
「あとっ、少し」
中へ少しずつ押し込んで、やっと、根元まで入った。ここでまた動きを止め、馴染ませる。
「どう、痛くない? 大丈夫そう?」
「ふっ、ん……お腹、ん、入ってる。大っきい、の」
「っ……そら、そうだな、うん」
何でこんなやりとりが、無駄にエロく響くのか。衝動の方に、メーターが振り切れそうだ。
ふうー、と息を長く吐く。汗が、こめかみから首まで伝い落ちた。
「締めつけ感が凄いな」
「ご……めんっ」
「何で謝るんだ? あったかくて、いや、熱くて、包まれてて、すっげー気持ち良い、って痛てててて! こら更に締めるな!」
「ああっ、ごめん、ほんとごめん」
もう、明らかに泣いている声だ。
周央はずびっと鼻を啜った。痛いのか、苦しいのか?
どうしたら、周央は楽になれるんだろう?
「なあ、これ、入れたんだから、セックスしたことになるよな? もう抜いて、終わりにしよう」
周央がこれ以上辛そうにするのを見ながらヤるなんて、それこそ萎えてしまう。
「ヤダ、絶対にヤダ!」
周央は、首を激しく振り、身体を捻って俺の方に顔を向けた。やっぱり、涙でぐしゃぐしゃに濡れている。目が真っ赤だ。
腰に添えられた俺の腕に手を伸ばし、懇願するように掴む。
「抜くな、よぉ」
周央の目から、涙がぽろぽろと落ちた。
はめ倒したい。ああ、くそっ。
「じゃあ、こういうことになるぞ?」
俺は、腰を少し引いて、また根元まで、音を立てて押し込む。
「はっ、ぁぁぁ」
「どう、痛い? 駄目?」
「ダメ、じゃない」
もう一度、ゆっくり引いて、ゆっくり押し込む。
「んっ、痛……いけど、何かっ」
俺は止まり、言葉を待つ。
「腰の、辺り、が、ぞわぞわ、する」
そのぞわぞわを思い出したのか、また、入り口を締めてくる。ぞわぞわ。それは、
「痛いけど、気持ち良いのも、くる?」
「ってか、ヤれよ! ここまできて僕の心配とか要らないんだよっ」
周央が叫ぶ。俺の理性がふつりと切れた。
粘液の音、俺と周央の肌がぶつかる音、はあ、はあという熱い吐息、静かな部屋にいろんな音が響いて、更に興奮が増す。
衝動のまま、突いて、引く。どんどん早くなる。
気持ち良い。
周央に負担がかかっていたら、とも思うが、もう腰の動きを止められる気がしない。というか止まらない。
周央は再びクッションに顔を埋め、
「んっ、んっ」
と揺れに合わせて抑え気味に声を出している。
周央には、痛みの方が強く感じられているのだろうか。どうしたら、周央も気持ち良くなれる?
「……なあっ」
合宿で得た知識の断片を思い出す。
「前、触って良い?」
「……好きに、んっ、しろ、よ」
俺は、腰の動きを緩め、左手で周央の背中を撫で上げる。上体を寄せようとしたら、周央が少し、股を開いて下に下がってくれた。
腹を周央の背中に密着させたまま、右手で周央の竿を握り込み、優しく扱く。
「っふ!」
びくっ、と周央の背中が跳ねる。
反応が良い。少し元気を無くしていた性器は、あっという間に硬くなった。俺は、先の方を指先で弄ぶ。
「さ、先っぽ!」
「ん、良い?」
割れ目を指の腹で擦り、染み出してくる我慢汁の滑りを塗り広げる。
「んぁっ、ああっ」
クッションを抱きしめた周央の口から、上擦った声が漏れ出た。
周央の中が、俺の性器を圧迫し始める。
「きも、ちいいか?」
こちらを捻り向く周央の表情は、全体的に薄い血色に染まり、涎と汗と涙を流しながら、とろりと緩んでいた。
「んふっ……き、も、ちい」
本当は、唇にキスをしたかった。労いと、感謝と、心の底から湧いてくる熱い感情を、キスで伝えたかった。
でも、ついさっきまで童貞だった俺には、この体勢からどうすればキスができるのか思い至らない。
俺の胸が周央の背中から、濃厚な体温を感じ取る。
肩甲骨の下、汗で湿った肌に唇が当たった。そこを舐め、想いの丈の分、強く長く吸った。
「あああっ!」
「す、おう」
「んっ」
「かわ、いい」
周央の中のうねりがぐっと強くなる。
俺は、硬くなった周央の昂りを、更に昂らせるべく、強く擦り上げる。
「ああっ、あっん」
周央の中がうねって絡みつき、俺を刺激する。俺はそのうねりに呼応するように、腰の動きを速めた。
「と、うまぁっ」
切なげな声。
「ぼ、くも、ぅイ……くっ」
「おれ、もっ」
「あああああああっ」
「っ、うああぁっ」
周央の中で思い切り搾られて、俺の中身が濁流のように押し出ていった。
「……はっ、とう、ま、んっ」
頭が、ぐらぐらする。
「んあっ、はあっ。もう、抜いちゃ、う?」
何だこの、周央の、聞いたことがないくらいの、甘えてるような声は。
「まだ、あっ……抜かない、で」
なるほどそうか、これ、甘えてんのか。
「と、うまとっ、繋がれ、たの……奇跡、みたいな、ものだから」
胸が締めつけられる。
周央!
口にしたつもりなのに、声にならない。荒い息だけしか出ない。
くそっ、意識が飛びそうだ。
あ、そういやナマでやっちゃったよな? ナマは処理が大変らしいぞって、確か聞いたような。肝心の処理、というのがどういうものか、結局合宿に来ている奴らは誰も知らなかった。ヤり方は知ってるくせに、使えない奴らだ。
周央は大丈夫だろうか。身体は?
それから……それから言わなきゃ。俺は、周央のことを……
あ、これ、駄目だ。ぐらりと身体が傾く。
目の前が、真っ暗になった。
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