30 / 33
Epilogue
空港に到着する。
あれからどれくらい経っただろう。手筈を整えて、ようやく今日から、こちらに住むことができる。
俺は直を見て、我慢できるだろうか。直は俺を見て、成長した、でも変わらないと思ってくれるだろうか。
期待と不安で、鼓動が早くなる。
キャリーバッグを引っ張り、歩く。
ここまで来るのに、たくさんの人が力を貸してくれた。きっとこの先も、そうして進んで行くのだろう。
たくさんの感謝を、ふたりで返していけたら良いと思う。
人混みの中、直を見つける。向こうも、気づいたようだ。
「……た、新太、新太!」
大声で俺の名を連呼する直は、長く伸びた髪をキラキラと靡かせ、ダッシュでこちらに向かってくる。
俺は笑った。涙が一粒、落ちる。
これからの、俺達の物語。ふたりでひとつの物語が、胸の中に飛び込んで来る。
俺は、精一杯の気持ちを込めて、抱き締めた。
ともだちにシェアしよう!