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Epilogue

 空港に到着する。  あれからどれくらい経っただろう。手筈を整えて、ようやく今日から、こちらに住むことができる。  俺は直を見て、我慢できるだろうか。直は俺を見て、成長した、でも変わらないと思ってくれるだろうか。  期待と不安で、鼓動が早くなる。  キャリーバッグを引っ張り、歩く。  ここまで来るのに、たくさんの人が力を貸してくれた。きっとこの先も、そうして進んで行くのだろう。  たくさんの感謝を、ふたりで返していけたら良いと思う。  人混みの中、直を見つける。向こうも、気づいたようだ。 「……た、新太、新太!」  大声で俺の名を連呼する直は、長く伸びた髪をキラキラと靡かせ、ダッシュでこちらに向かってくる。  俺は笑った。涙が一粒、落ちる。  これからの、俺達の物語。ふたりでひとつの物語が、胸の中に飛び込んで来る。  俺は、精一杯の気持ちを込めて、抱き締めた。

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