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第3話 なんとか治療できた

真っ黒ワンコの方に進めばぬかるんでいた足場も固くなっていく。 真っ黒ワンコの雰囲気がおだやかになったからか、腰が抜けていた感覚も薄くなってきて、湖の淵を越える頃には立って歩けるようになってきた。 でも、まだダッシュで逃げられるほど足に力が入らない。 僕はことさらゆっくりと真っ黒ワンコに近づいて、できる限り穏やかな声で声掛けする。 「頼むから、傷が治ったとたんに襲ってきたりしないでくれよ……?」 「わふ」 真っ黒ワンコは「大丈夫だ」とでも言いたげにしっぽをパタ、と振って見せる。 こうしてみるとなかなか可愛い。でっかいけど。 念のために防護結界を三回重ね掛けしてから、真っ黒ワンコの傍に膝をつく。もう、唸ったり威嚇されたりはしなかった。 「うわー、エグい傷」 背中の肉がごっそりとえぐり取られている。かなりでかい魔物につけられた傷のようだった。 よくぞ逃げ延びたものだ、と感心しつつポーションを塗り込んでやる。 「グルルルル……」 痛そうに顔をしかめながらも、真っ黒ワンコはじっと耐えている。たっぷり傷口に塗り込んで、傷口が塞がったのを確認してから残りは手のひらに取って口元に差し出してやる。 真っ黒ワンコは俺をジッと見てから、おとなしくポーションを舐める。ぴちゃぴちゃと音を立ててポーションを舐めとり、全部舐め切った真っ黒ワンコは、ゆっくりと立ち上がった。 やっぱデカい。首をあげたら僕の腹くらいまで体高がある。 若干動くのが億劫そうではあるけれど、足もよろめいてないしもう攻撃的な様子もない。 「もう大丈夫そうだな」 ホッとした。 と同時に自分の汚れっぷりが急に気になってくる。 さっきは気持ちが折れすぎてそのまま帰ろうとしてたけど、こんなに上から下までどろどろのまま帰るのはさすがにあんまりな気がする。 せっかく湖にいるんだし、湖の中に危険な魔物がいるわけじゃない。 魔物も今のところ姿を現さないし、真っ黒ワンコも襲ってはこないだろう。手早く水浴びして、服もざっと洗ってしまおう。歩いてりゃそのうち乾くだろうし。 背の高い草が生い茂ったところだと見晴らしがよくないから、開けたところで水浴びしようとテクテク歩き出したら、一定の距離を保ったまま真っ黒ワンコもついてくる。 感謝してくれてるのかなぁとちょっとホッコリした。 周囲が見渡せる湖の岸で僕が服を脱ぎだしても真っ黒ワンコは去って行かない。 「元気になってよかったな。気にしなくていいから住処に帰りな」

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