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第4話 突然のピンチ

そう声をかけてはみたんだけど、真っ黒ワンコはフンスとでかい鼻息を漏らしてから、その場でくるんと丸まって時々こっちをチラリと見ている。 立ち去る気はない、という意思表示にも見えるけど、もしかしたら単純にまだ体力的には回復していないから不安で、人の傍にいたいだけなのかも知れない。 ま、とりあえず今は体と服を洗う方が先か、と思ってさっさと服を脱ぎ、体と服をじゃぶじゃぶ洗ってやっとスッキリした。 ああ、僕ののどかな一日が戻ってきた……。 心底ホッとしつつパンツを履いて、ズボンを履こうとしたその時だ。 「!!!???」 とんでもない瘴気が僕を襲う。 完全に固まった。だって、こんな濃い瘴気、これまで感じたことなんてない。 眼球だけはなんとか動いて瘴気の方を見てみたら、見たこともないような立派な銀の鬣を持った魔物が舌なめずりをしていた。 生物としての圧倒的な格の違い。パッと見であちこちケガをしてはいるみたいだけれど、それでもその身から醸し出される強者のオーラは燃え上がるように恐ろしい。 あ、僕、死んだ。 「ガウッ!!!」 思考停止した僕の耳に、真っ黒ワンコの声が響く。 いつの間にか雄々しく立ち上がったワンコが、オレを守るように魔物と僕の間に立ちはだかる。でもその勇敢な後姿を見る事ができたのはほんの一瞬で、地を蹴った黒い体は銀の鬣を持つ魔物へと躍りかかっていく。 「ひえ……」 激しい戦闘を繰り広げる二頭を前に、僕はもう情けない声を上げて震える事しかできない。 でも、互角の戦いをしているように見えた二頭の間に、少しずつ優劣がついてきた。真っ黒ワンコの劣勢だ。なんせあの銀の鬣の魔物、爪も牙も大きく強靭で、真っ黒ワンコはどんどん傷だらけになっていくからだ。 真っ黒ワンコが倒されたら、僕なんて瞬殺だ。 ゴク、と唾をのんで震える手で足元のバッグからポーションを取り出す。 僕のなけなしの魔術でポーションを気化し、効果を凝縮させて真っ黒ワンコを支援する。ポーション二本ですっかり回復した真っ黒ワンコが一気に優勢になる。 そのタイミングで拘束魔術を放ったら、ほんのほんの一瞬だけ銀の鬣の魔物の動きが止まった。 もちろんその一瞬を見逃す真っ黒ワンコじゃない。喉笛にがっちり噛みついて、しっかりと息の根を止めると勝利の雄たけびをあげた。 すごい!!! めっちゃすごい!!! 真っ黒ワンコ、超強い!!!! めちゃくちゃ拍手した。 僕の拍手に気をよくしたらしい真っ黒ワンコが、鼻先をツンとあげた得意そうな顔で僕の方にのっしのっしと歩いてくる。

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