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第5話 お前、冒険者に飼われてたの…?

ワンコでもドヤ顔してるって分かるんだなぁ、って内心面白く思いながら、僕は真っ黒ワンコを手放しで褒めた。 「真っ黒ワンコ、お前すごいじゃん!!!!!」 わしゃわしゃと頭やら首やらを撫でてやったら、嬉しそうにわふわふ言ってる。耳がピーンと立って、しっぽが嬉しそうにわさわさと振られている。 こうしてると真っ黒ワンコも可愛い。 「お前にあんなエグい傷つけたの、あの魔物なんだろ? 良かったなぁ倒せて」 「わふっ!」 嬉しそうにわふわふしてるの可愛い。 手持ちの干し肉を差し出してやると嬉しそうにバクッと食いつく。はぐはぐと幸せそうに食べてるのを見て満足した僕はよいしょと立ち上がる。 あ、服着てなかったわ。 もそもそと服を着て、今度こそ町の方へと足を進める。 「わふっ!!??」 なんか真っ黒ワンコの声が聞こえたなぁと思った瞬間、押し倒されてた。 「痛てっ!!」 「わふっ」 目の前に真っ黒ワンコのデカい顔がある。どうやら真っ黒ワンコに押し倒されたらしい。 「なんだよお前……」 「わふっ、ガウ、グルルっ」 デッカい前脚で胸を押さえつけられてなんか凄まれる。 なんなの急に……。 ひょいと俺の上から退いた真っ黒ワンコは、なぜか僕の服のすそに噛みついて、どっかへ引っ張っていこうとする。仕方がないからついてったら、さっきの銀な鬣の魔物のとこに導かれた。 「なんなの……?」 「ガウッ」 「なんかやれって言ってる?」 「ガウ」 そうだとでも言いたそうな顔。ちょいちょいと銀の鬣を前脚で掻いてみたり、爪や牙の部位を鼻でツンツンとつついて見せるから、もしかして、と思い当たった。 「もしかして、素材採取しろって言ってる?」 「わふっ!!!」 嬉しそうに肯定された。 「お前、冒険者に飼われてたの……?」 まさか真っ黒ワンコに素材採取を要求されるとは。まあ確かに素材として冒険者ギルドに持ち込めば、めっちゃ金になりそうな感じがする。 「うーん…全部自分で解体するのは無理そうだから、特徴的なとこだけ採取してギルドで解体をお願いしようかな」 「わふっ!」 僕の言葉を聞いた真っ黒ワンコは満足そうに銀の鬣を前脚で指した。なるほど、そこを持ってけってわけね。 そんなわけでいったん銀の鬣を採取して町に戻り、無事に冒険者ギルドに銀の鬣を提出したわけだが、もちろんギルドのスタッフのアンドルーさんからは死ぬほどびっくりされた。 なんでもここらじゃ滅多に出現しない、A級の魔物だったらしい。 僕なんかじゃ名前も聞いたことなかった。

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