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第11話 【ディエゴ視点】通じた!!!
「びっくりし過ぎてポーションも投げちゃったし……」
耳を疑った。やっぱり今、助けようと思ったって言ったよな!?
しかも、ポーション!? 見ず知らずの、しかも人間でもない相手に、ポーション……!?
なんてお人好しなんだと驚愕してその男を見てみたら、傷ついた顔でポーションを拾い、四つん這いのままゆっくりと後ずさって行こうとしていた。
っ! 嘘だろ……?
「心配しなくても近づいたりしないよ。もう帰る」
冗談じゃない! 俺は慌てた。
「きゅ、キューン! キューン……!」
ま、待ってくれ! さっきは悪かった……!
そんな思いを声に乗せて、必死で引き留める。
「え」
「く、くぅん、キューン」
人間が聞いたら切なそうな声に聞こえる筈の声で、優男の良心に訴えかけた。
こんな俺にポーションを使おうなんて思っていたくらいだ、お前は優しい人間なんだろう? 頼む、待ってくれ! 俺にはそのポーションが必要なんだ……!
「くぅん、くぅん、キューン」
「……」
「ぴすぴす、キューン」
「もしかして、僕に帰らないで欲しいの?」
「わふっ」
通じた!!!
俺も心底嬉しかったが、優男も嬉しかったらしい。
楽しそうに笑った顔は思いのほか愛嬌があって可愛かった。俺のせいで尻餅をついて両手両足はもちろん腰から下はずっぷりと泥に塗れている。顔にも泥の飛沫が飛んでいるっていうのに、こんな顔で笑えるなんて。
「お前、やっぱり飼い犬だったことあるんだろ。現金だなぁ」
「わふ……」
そもそも狼だし、別に飼い犬だった事はないが、獣人だから人間の言葉は分かる。
少なくともさっきよりは警戒を解いてくれたみたいで安心した。
「傷を治してやるから、近づいても怒るなよ?」
「わふっ!」
やっぱり優しいヤツだ。
「頼むから、傷が治ったとたんに襲ってきたりしないでくれよ……?」
「わふ」
当たり前だ。襲ったりするもんか。その思いを込めて返事した。
まだどっかビビッてる顔でそんな事を言いながらも、ゆっくりと近づいてきてくれるのが嬉しい。足元がよろめいているのは、きっと腰を抜かしたせいだろう。本当に申し訳ない。
そんな気持ちを分かってほしくて、しっぽをパタ、と振って見せた。
俺の傍に近づいてきた優男は、自身に防護結界を重ね掛けしてから俺の傍に膝をつく。それなりの危機意識はあるようで何よりだ。俺は彼に命を預けたような気持ちで目を閉じた。
「うわー、エグい傷」
小さな呟きと共に、傷口にポーションが塗り込まれる。
「!!!!!!!」
めっっっっっっっっちゃ痛い!!!!
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