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第12話 【ディエゴ視点】俺が守る
体がびくつくのを抑えるだけで精一杯だ。
「グルルルル……」
耐えきれずに唸り声が漏れてしまった。
怖がっていないかと心配になってうっすらと目を開けたら、逆に心配そうな顔で覗き込まれた。
その顔にこっちまでなんだか安心してしまう。
ポーションをたっぷり傷口に塗り込まれていくうちに痛みはなくなり、傷口が塞がったのかと安堵する。すると優男はポーションの残りを手のひらに取って、俺の口元に差し出してくれた。
どこまでも優しい。ちょっと涙が出た。
ポーションを舐めたら体の中からも活力が漲ってくる。
ゆっくりと立ち上がってみたら、ちゃんと立ち上がる事ができた。完璧じゃないが、これなら何とか戦える。
「もう大丈夫そうだな」
おかげさまで。
でも、自分の体が何とかなったら、途端にまたこの優男の事が心配になってきた。この場所には俺の匂いも、俺の血臭もバッチリ残ってる。さっきのグラスロがここに来るかは未知数だが、こうなったら一刻も早く立ち去って欲しかった。
だがもちろん優男はそんな事は知らないわけで、周囲を眺めながらゆったりと歩いていく。こののどかな風景同様、この辺りは本来大きな危険もない場所なんだろう。この優男も軽装だしな。
湖のほとりでふと立ち止まって周囲を見回した優男は、心配でついて来た俺に気がついて優しく笑いかけた。
「元気になってよかったな。気にしなくていいから住処に帰りな」
呑気な事を。ついため息が漏れるが、グラスロが来るかも、なんて事は当然優男が知る筈もない。心配しているのもこっちの勝手だ。
体力も戻って来たから人型に戻って事情を伝えようかとも思ったが、A級冒険者だってのに格下の筈の魔物に遅れをとって死にかけたのを、なんだかこの優男に知られるのが嫌で獣形を保つ事にした。
優男ときたら本当に呑気なもので、いきなり服を脱いで湖に入る。体や服を洗い始めた優男を見て驚くやら呆れるやらだが、まぁ、泥だらけだったしな。気持ちは分かる。
優男が水浴びしてるのをぼんやり見てるうちに、グラスロを撒いてからそこそこ時間も経ってるし、こんなに心配しなくても大丈夫か……と思い始めた。
全裸で水浴びしてる優男をジロジロ見るのも憚られて、丸まったまま目を閉じようとしたその時だ。
「……!」
嗅ぎ慣れた瘴気に顔を顰める。
やっぱり追って来やがった。しかも、俺よりも簡単に食えそうかつ柔らかそうな優男の方に標的をさだめてやがる。
それに気がついた瞬間、俺の中に猛烈な怒りの感情が湧いて来た。
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