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第13話 【ディエゴ視点】興味か、それとも

この個体が俺よりも強いのは既に分かってる。相手にもそれなりに傷は負わせたが、俺だって完全じゃない。勝てるかどうかはギリギリだろう。 それでも。 コイツは命の恩人だ。たとえ俺が死んだって、コイツには指一本触れさせるもんか。 そう心に決めて、俺は銀の鬣を持つ魔物、グラスロに踊りかかった。 *** まぁそうは思ったものの、結果としては辛勝だ。 ジリジリと傷が増え追い込まれていたところに、あの優男が多分ポーションで加勢してくれたらしい。どうやったのかは分からなかったが、傷が癒えて急に体が軽くなった。 それがなかったら多分あのまま嬲られるように殺されていただろう。 しかも、それまで一瞬たりとも隙を見せなかったグラスロが、ほんの瞬きする程の時間固まったからこそ、俺はヤツの喉笛に喰らい付き仕留める事ができた。 あの一瞬のタイミングが、俺にとってどれほど貴重だったか。 まさに生死を分ける一瞬だったと言っても過言ではない。 グラスロのあの不自然な硬直。きっとこの優男が何かしたに違いない。俄然この優男に興味が湧いて来た。 いそいそと服を着る優男をジッと凝視する。ぱっと見は呑気でお気楽そうな優男だ。身長も体格も人族ではごく一般的で特徴らしい特徴がない。短く刈り込んだ金の髪も空みたいな青い目も、割とよくある配色だと思う。垂れ目がちなところや笑った顔は可愛いと思うが、それだけだ。 どこにでもいそうなヤツなのに、とんでもなく優しくて善良なのには驚いたが、もっと驚いたのは俺がグラスロと戦っている最中にサポートしてきた事だった。 A級同士の戦いに、手を出せる輩なんて多くない。次元が違いすぎて見ている事しかできないのが大半だ。 つまりこの優男は、見かけに反してそれなりに肝が据わっているという事だろう。俺に威嚇されて腰を抜かした貧弱なヤツだという評価は、一旦保留にしようと思った。 どうやって俺をサポートしたのか。 この男がどんな人間なのか。 もっとこの男の事が知りたい。色んな顔が見てみたい。 湧き出てくる好奇心が俺を突き動かす。幸いちょうど急ぎの依頼も入ってないし、たまには自分の事を知らないヤツの元でのんびり過ごすのもいいかも知れない。 よし、この優男について行ってみよう。 勝手にそう決意する。 俺の勝手な決意など知る由もない優男は、服を着終わったかと思うとなんとグラスロの屍体をほったらかして帰ろうとしていた。 「わふっ!!??」 何やってんだ! A級魔物の討伐報酬と素材報酬、いったいいくらだと思ってんだよ……!

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