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第14話 【ディエゴ視点】なんたる屈辱
驚いて引き留めようとしたら勢いが強すぎたらしくて押し倒してしまっていた。やっぱりコイツは貧弱なんだろうか……。
疑念を持ちつつ説教し、素材の採取を促した。俺の命の恩人はとんでもなく優しいが、どうにも頼りない部分があるらしい。
まぁいい、しばらくの間くらいなら、面倒を見てやらんでもない。なんせ命の恩人なんだから。
そう思って優男……いや、そう言えば冒険者ギルドで会っていた男にラスクと呼ばれていたから、名はラスクと言うんだろう。
そのラスクの家に無理矢理ついていったわけだが。
「よーし、じゃ洗うよー!!!」
「キャウン……」
信じられない事に、容赦なく水をぶっかけられ丸洗いされてしまった。いい匂いの石鹸でアワアワのゴリゴリに洗われる。
「僕ん家に入るなら風呂でくまなく洗われてから」
そう宣言された通り、本気でくまなく何度も何度も。耳の先からしっぽの先まで。肉球どころか足指の股まで。体は地肌に近いふわ毛の中の中まで指を突っ込まれ、耳の中まで指先で丹念に洗われて俺は次第にぐったりしてきた。
人型になった時でもこんなに丁寧に洗った事なんかない。本当に瘴気や雑菌を全て洗い流そうとでも思ってるんだろうか。洗い方に執念みたいなものを感じて、俺は目を瞑って耐えた。
水浴びキライ……。
「うわふっっっ!!???」
突然急所を擦られて、さすがの俺も飛び上がる。
「こーら、暴れないの」
これが暴れずにいられるか!!!
「わ、わふっ!! ガウウッ、ガッ……」
必死で抗議してラスクの腕から抜け出そうとした時だ。突然体が動かなくなった。
「はーい、ちょっとだけ我慢してね〜、すぐに終わるから」
のんびりした声でそんな事を言いながら、ラスクは俺のタマを丁寧に洗い、しまいにはしっぽを持ち上げてケツの穴まで洗い始めた。
なんたる屈辱……!!!!!
しかしどんなに悔しくても、体がぴくりとも動かない。
この体の動かなさ。絶対に魔術だ。拘束魔術を使ったに違いない。
「はい、おしまい! よく頑張ったね」
「……」
体を柔らかいタオルで拭き上げられてヨシヨシと頭を撫でられても、もはや声も出なかった。
なす術なくとんでもないところを洗い倒されて、傷心の俺はヨロヨロと部屋の隅に向かい、ペションと床に伏す。
ピス……と情けない息が漏れた。
なんなんだコイツ。
ヒョロヒョロの優男のくせに。
なんでS級目前の俺に、あんなにガッチリ拘束魔術をかける事ができるんだ。
あの時グラスロの動きが突然止まったのも、きっとこの拘束魔術だったんだろう。
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