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第15話 【ディエゴ視点】こんな筈では
ひとつ謎が解けた。
……謎は解けたが、あのグラスロは一瞬しか拘束されていなかったのに、俺は洗い終わるまでの時間しっかり拘束されたのが余計にプライドを刺激する。
いや、きっとあのグラスロは魔法耐性がズバ抜けて高かったんだ……。
またピス……と鼻息が漏れる。
「もう、まだ拗ねてんの?」
拗ねてるんじゃなくて怒ってるんだ……!
ラスクが声をかけてきたけど無視してやった。俺はまだ許してないからな!
俺の恥ずかしいところをあんな……! 問答無用で洗い倒すなんて許せるはずがない。
ツーンとそっぽを向いて、耳もしっぽも動かさないように気を配る。ところがだ。
「ま、いいや」
俺がまったく反応を見せずにいたら、ラスクはあっさりと諦めてしまった。
「飯でも作るか」
「わふっ!?」
飯という言葉に思わず反応してしまう。
俺の事をほっといて飯を作ろうとしているのは気に食わないが、ぶっちゃけ俺も腹が減ってるし、飯に罪はないもんな!
いそいそと買って貰った肉を持ち出し、ラスクに一生懸命訴えて肉を焼いてもらった。さすがに生肉は最終手段だ。できる事なら焼きたいし、もちろん味が付いてる方がいい。
首をかしげながらも肉を焼いてくれるラスクの姿を見て、俺の怒りも少しずつおさまってきた。
俺のためにたっぷりの肉を焼いて皿に山盛りに盛ってくれてから、自分の分を作っている背中を見ると、今度は逆に申し訳なくなってくる。
そうだよな。
風呂であらぬところを洗われてしまった衝撃でついつい怒ってしまったが、そもそもラスクに興味があって勝手におしかけてるのは俺の方だ。
しかも俺の命の恩人だから、ラスクの面倒を見てやってもいい、なんて偉そうに思っていたが冷静に考えてみたら面倒を見るどころか世話して貰いっぱなしな事に気が付いてさすがにヘコむ。
俺は何をしにきたんだ……。
いや、やっぱりこの姿だから世話をかけさせる羽目になっているわけで、人型になれば。
しかしそうなると、こんなにも気を許してくれるだろうか。
一緒に屋台を巡り、一緒に風呂に入り、微妙に通じてる感じで言い合いしながら飯を食う。それが存外楽しくて。ころころ変わる表情も、文句を言いながらも楽しそうに世話を焼いてくれるのもなんだか嬉しかった。
俺は仮にもこんな小さな街じゃお目にかかれないだろうA級冒険者だ。そうと知れればこんなにあけすけに話してくれないかも知れない。なぜ宿に泊まらないのかと不審がられるだろうし、少なくともこんな風に家に入り込むのは無理だ。
……それはちょっと寂しい。
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