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第18話 【ディエゴ視点】それはねぇだろ!

「お前くらい強かったらそんな事する必要もないんだけどね」 見上げる俺の背中から腹を撫でつつ、ラスクが笑う。 「お前はきっと、ご主人様とたくさんの街や場所を冒険したんだろうなぁ。なぁどっかでエリクサーの情報ってなかった?」 「クゥン……」 すまん、聞いた事がない。 今までエリクサーの事など気にしたことがないから、もしかしたら何か情報はあったのかも知れないが。役に立てなくてスマン。 「ダメかぁ。ま、そう簡単にいくわけないよな」 くすくすと笑いながらラスクが俺の首にスリ……と頬を寄せた。なんだかすごく落ち着かない。でも、あんな寂しそうな瞳を見た後で、避けるわけにもいかなくて、俺はただ受け止める事しかできなかった。 「今はまだ薬の知識をつけたり、いつか旅に出る事ができるようにせめて護衛を雇えるくらい稼ごうって頑張ってるんだけどさ。お前がすっごい魔物倒してくれたから一気に夢が近づいたよ。まぁ知識がまだまだ足りないから、もうちょっと師匠の元で学んでからだけど」 あ、そうか。グラスロの討伐報酬と素材報酬が入ったんだもんな。そりゃ普通に稼ぐ数年分の報酬が手に入っただろう。冒険者はハイリスクハイリターンだからな。A級の魔物を仕留めたら数年は遊んで暮らせる。 そこそこ腕の立つ冒険者だって雇えるだろうから本当なら今すぐ旅立ったっていいんだろうが、ラスクはそれなりに慎重派らしい。俺なら小躍りして飛び出してる。 「あー、なんか話したらスッキリしたなぁ。夢がデカ過ぎてあんまり人にも言えなくてさ、なんかモヤモヤしてたんだ。聞いてくれてありがとな!」 そっか、とちょっと納得する。 なんで急に狼である俺なんかにそんな話を始めたのかと思ったけど、多分ラスクは今日突然夢に一歩大きく近づいたからこそ、そのきっかけである俺にそんな話をしたのかも知れない。 「なー真っ黒ワンコ、……って、ずっと真っ黒ワンコって呼ぶのもヘンか」 さすがに気が付いたか。どうするつもりかとちょっとワクワクした。 「でもなー……もしかしたら、ご主人様とはぐれただけかも知れないもんなぁ、お前」 ご主人様などいない。が、それを伝える術もないんだよなぁ。 「ま、お前の飼い主が見つかるまでの仮の名前って思えばいいか。お前、何がいい?」 「わふ……」 「クロ? ポチ? タマ?」 「ガウウッ!!??」 それはねぇだろ! 仮の名前にしてもいい加減すぎる……! 「なんだよ急に。気に入らないのか?」 「グルルルル……」 当たり前だろ。俺にはディエゴっていう、立派な名前があるんだよ。

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