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第23話 アンドルーさんの見解

そう言って街の外れのちょっと小高い丘の上のボロ屋を指さす。 「ちょっと外れなんだな」 「薬の調合とか頻繁にやるんで、あえて外れを選んだんですよね。すっごく安かったし」 孤児の僕からしてみたら、貸してくれる家があるだけでも充分にありがたいわけで、ちょっと職場や市場から遠くて不便なのなんてなんてことないんだよね。 「へえ……おっと!」 突然、アンドルーさんが後ずさった。 「アンドルーさん?」 不自然に後ずさったアンドルーさんに驚いて振り返ったら、アンドルーさんもびっくりした顔で僕を見る。 怪訝な表情のまま僕の方へと手を伸ばしてきたアンドルーさんに、僕も手を伸ばす。けれど、手が触れるよりも早く、アンドルーさんの手が弾かれたように遠のいた。 「あっ」 「すげぇ、結界だな」 「結界!? そんな大層なもの張ってないですよ」 「ところが張ってあるんだな。多分結界の主が……」 言いかけて、アンドルーさんがフッと笑う。 「ほら来た」 「ガウッ!!!」 「うわっ!」 突然真っ黒い固まりが目の前に現れてびっくりする。僕とアンドルーさんの間に割り込むように降り立ったのは、家にいる筈のネロだった。 「えっ!? ネロ? なんで!?」 「ガウッ! グルルルル……ガウッ!」 ネロがすごい勢いでアンドルーさんを威嚇するから、僕は慌ててネロの首に縋り付く。僕の身体が引きずられそうなくらいに、ネロはいきり立っていた。 「ネロ、どうしたんだよ! 大丈夫、この人は冒険者ギルドの人で、悪い人じゃないから」 「ガウルルル…………」 「ハハッ、これはこれは」 めちゃくちゃ威嚇されてるのに、なぜかアンドルーさんは楽しそうに笑い出した。 「あ、アンドルーさん……?」 「いや、彼は多分、ラスクに手を出すなとでも言いたいんだろうね」 「手を出すって……」 「家まで押しかけてきた上に、今はちょうど手を取ろうとしていただろう。そりゃあ怒る」 「はぁ? 年頃の娘の親父さんでもそんなに厳しくないでしょ……」 呆れる僕にアンドルーさんはさらに楽しそうに笑う。 「いやぁ、まさかとは思ったが、これは面白いものを見せて貰った。ラスク、凄いのをひっかけたもんだな!」 アンドルーさんが笑いながら僕の肩をバシッと叩いた瞬間。 「ガウッ! ガフッ!!! ガルルッ!」 「うわっ! ダメだって、ネロ!!!」 ネロがアンドルーさんに飛びかかろうとするから、僕は必死で全体重をかけて阻止した。僕でも怖いくらいの勢いなのに、アンドルーさんは怖がるそぶりもなく大笑いしてるのがすごい。

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