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第24話 アンドルーさん、すごい!!!

アンドルーさんは両手を挙げて降参ポーズを取ったかと思うと、ネロに向かって楽しげに言う。 「悪い悪い、邪魔するつもりはないよ。オレはラスク狙いでもないから安心していい」 「ガフッ……ウゥウ……」 「え、待って、どういう事?」 「馬に蹴られる前にオレは帰るよ。ラスク、お前の真っ黒ワンコは犬じゃ無くて狼だ。飼い主なんてモノはいないから、安心して可愛がってやるといい」 「えっ、今の数分でそこまで分かるんですか!? アンドルーさん、すごい!!!」 「まぁな、じゃあオレは帰るよ。彼の機嫌を損ねそうだからな」 「彼って……ネロの?」 「ああ。ネロって名付けたのか?」 「はい。名前がないのも不便だから」 「そうか、じゃあネロ君、できればそのうちギルドにも顔を出してくれよ。結構いい情報を提供できる筈だ」 「わふ……」 「え? え?」 僕が戸惑っている間に、アンドルーさんは「じゃーな」とさっさと帰ってしまった。 「え……どういう事? 何今の会話……」 「わふっ!!!」 意味が分からず首を傾げる僕の袖をネロが引っ張る。 でも、さっきのアンドルーさんの言葉が気になりすぎて、ついついアンドルーさんが帰っていった方を眺めてぼんやりしていたら、ついにはネロにグイグイと押されてよろけそうになってしまった。 「なんなんだよ、もう」 「ガウッ」 「なんか機嫌悪いし……」 あんまり押してくるからしぶしぶ家に入ろうとすると、玄関じゃ無くて風呂の入り口の方へと追いやられた。本当にもう、何なんだ。これじゃいつもと逆じゃないかとちょっと可笑しくなってくる。 「分かった分かった、風呂から入れば良いんだろ?」 「わう」 そうだ、と言いたげなしたり顔。偉そうだなぁ。 「お前も入る?」 思わずそう聞いてみたら今度は途端にネロの耳としっぽがしょげていく。 「わふ……」 それでもトコトコと風呂に入ってくるのが可愛い。風呂は嫌いなくせに、ちゃんと入らなきゃいけないのは分かってるんだよなぁ。 真っ黒な背中にもこもこの泡を立てて、しっかり洗ってやりながら僕はさっきのアンドルーさんの言葉を思い出してい呟いた。 「お前、狼だったんだなぁ。すごく人なつこいから、ワンコかと思ってたよ」 「わふ……」 「狼がこんなに大人しくて、人の言葉が分かるなんてびっくりだなぁ。お前が特別に賢いのかな」 「くぅん……」 珍しく切ない声を上げて、ネロが僕の身体にスリ……と身を寄せてきた。あわあわの毛が直接肌を擦るからくすぐったくてしょうがない。けれどいつもにはない不安そうな様子が可愛くて、僕はぎゅっと抱きしめてやった。

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