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第25話 可愛いんですけど!?

「お前がワンコでも狼でも関係ないよ。それよりも本当に飼い主が他にいないなら嬉しいんだけど」 「わふっ!?」 耳がピン! と立って、ネロがキラキラの目で僕を見てきた。 「ケンカもするけどさ、結構お前との生活、気に入ってるんだよな」 「わ……わうっ! わふわふわふっ!! わふっ! わううっ!!!!」 「うわっ、おい、ちょっと……もうっ」 初めてこんなにめちゃくちゃに舐められた。 顔中どろどろになるくらい舐められて、押し倒されて撫でて撫でてって思いっきり身体を擦りつけてくる。 ホントにこれ狼……??? あまりのなつっこさに笑えてくる。 お互いにめちゃくちゃあわあわになって、洗い流すのも一苦労だ。シャワーが苦手で洗い流すのもそこそこに出て行こうとするネロを全身使って押さえつつ洗い流してやって、タオルで拭きあげるのももう慣れたもんだ。 暖炉の前で立派な毛皮を乾かすネロを横目で見ながら、メシの支度にかかろうと部屋に入った僕の目に、またもテーブルの上のブツが飛び込んできた。 うわー……今日のもまた、存在感マシマシだなぁ。 なんか日に日に置かれてる物が大きくなってる気がする。今日はホーンラビットだ。これまた肉がすこぶる旨いと評判の魔物だけど、その額にある大きなツノは薬の素材としても有用なものだ。 本当に誰がこんなモノを。 ひとつため息をついて、僕はベッド横の壁から朝仕掛けておいた記録石を外す。多分これに、真実が映されているはずだ。飯でも作りながら見てみるか……。 そう思ってホーンラビットを捌きながら、僕は記録石に魔力を流す。 記録石の表面に、僕が玄関から出て行く姿が小さく映し出された。ここまでは想定通り。けれどそのすぐあとの映像に、僕は言葉を失った。 「……」 「……」 「……」 ええ~~~なにこれ……!!!! あまりの衝撃映像に、僕の手はすっかり止まっていた。視線は記録石に釘付けだ。 だって。 僕が出て行って玄関の扉が閉まった途端、ネロがのそりと起き出して、僕が出て行ったあとの扉の前で、ずっと所在なさげにウロウロしてる。 時々扉を見上げては、キューン……と切なげな声を上げる姿が可愛くて胸が締め付けられた。 思わず暖炉前で丸くなってるネロを見てみたけど、僕の方をチラッと見ただけで、いつも通り「興味ありませんよ」的な顔をしてあくびなんかしてるっていうのに。記録石の中の様子と違いすぎるだろう……! これってあれか!? ツンデレってヤツか!? もしかして僕が仕事にいっちゃうと、本当は寂しくてしょうがなかったのか!!???

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