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第36話 【ディエゴ視点】ごめん……

ラスクがはた、と思い出した顔をする。 眉毛が下がって、一瞬しょうがないかって顔になるラスク、最高に可愛い。 「……っ」 「わ、ちょ、こら!」 ラスクを可愛いと思ったら無意識に腰が動いてたみたいで、また叱られた。 でも、俺が擦り付けたからかもだけど、ラスクだってちょっと兆してる。本当はもっと触れ合いたい。大好きな人に覆い被さって、こんなに至近距離に可愛い顔があって、肌が触れてるのに、舐めても擦り付けてもダメだなんてすっごく寂しい。 落ち着いてきたのかラスクの肌もいつもの色に戻ってきた。さっきまで、春にさく花みたいに薄いピンクで可愛かったのに。 ラスクに叱られて、耳としっぽはしゅんと萎んだものの、俺の暴れん坊な息子は萎んでくれない。元気いっぱいで愛しい人に愛嬌を振り撒こうと頑張っている。ラスクを怒らせるだけだから大人しくしてて欲しい。 「まったくもう……! ディエゴ、やっぱ人型になって。こんなんじゃおちおち眠れないよ」 「ごめん……」 シュンとしたまま人型になった。 目があったら、今度はラスクの顔がさあっと赤くなる。今日のラスクは色が目まぐるしく変わって、周囲の色に体色が変わるちょうちょみたいだ。 「うう……顔がいい……!」 ラスクが悔しそうに呻き声を上げる。 どうやらラスクはオレの顔がかなり好みらしい。この顔で良かった。 「とにかく、とりあえずは俺の上から退いて……」 残念、ついに退去命令が出てしまった。ラスクの横にころんと横になったら、右腕にラスクのぬくもりを感じて、それだけでも嬉しい。 人型になってラスクの顔が視界から外れたら、俺もちょっと頭がまわるようになってきた。 ……純粋にヤバい。 さっきの俺、完全にアウトだろう。何やってんだ……! 獣人だってバレたのに追い出されなかっただけでも幸運だってのに、さっきみたいに我を忘れてばっかりじゃラスクに愛想を尽かされてしまう。 「ごめん、ラスク。その……」 「大丈夫、分かってる。狼の時は理性が働きにくいんだろ? これからもここで一緒に暮らすなら、お前、今後風呂とベッドは別ね」 「……!」 ラスクの言葉にショックを受けて、俺は一瞬返事が出来なかった。 いや、当たり前だ。考えるまでも無く当たり前の話なのに、思ったよりもダメージがでかい。 「あ、今日はしょうがないから一緒に寝てもいいけど、お触りは禁止だから。これ以上舐めたりエロい事したらベッドから蹴り出すし同居もしない」 「! 絶対に良い子にする」 そう約束したら、ようやっとラスクが笑ってくれた。

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