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第37話 ちょっとヤバかった。
「絶対に良い子にする」
って、どこまでペット目線なんだよ、って思ったらやっとちょっと笑えてきた。
いやぁまいった。
マジでまいった。
しかもさっきまでは正直ちょっとヤバかった。
真っ黒ワンコが狼だったのはまぁいいとして、それがまさか獣人で、とんでもないイケメンで、しかもAランク冒険者なんていうびっくりするくらいすごい人で、なのに僕の飼い犬希望で、恋人になって欲しいって言ってくるって……なんかもう、色々キャパオーバー過ぎて脳みそが考えるのを拒否する。
つい数時間前まで、ワガママだけど素直で可愛いワンコだと思ってたのに、急にそんな事言われても、って思うじゃん。
なんとか平静を保とうって努力してたのに、この駄犬ときたら顔じゅうすごい勢いで舐めてきたかと思ったら、あんなとこまで舐めた上にでっかいちんちん擦り付けてくるっていったいどういう了見だよ。
あらぬところを思いっきりディエゴのでっかいちんちんが擦り上げるもんだから、うっかりちょっと勃っちゃったじゃん。
だがしかし、絶対にディエゴに動揺を悟られてはならない。
なんでもない顔をして、僕は明日の予定を口にする。
「明日ディエゴの家に行って色々持って来てさ、足りないものや近くで買った方が良い物は市場で揃えよう。グラスロの報奨金がたっぷりあるし」
「……」
「……ディエゴ?」
返事が返って来ないから、あれ? と思ってちらっとディエゴの方を見たら、目を潤ませて僕をじっと見てた。
だから! しょんぼりした耳するの、ズルいって……!
しかもイケメンの涙目、破壊力すごい。
「ラスク、もう怒ってないか?」
今にもキューン……って聞こえてきそうな悲しい声を出すの、反則じゃないのかな。
「怒って……ない、けど」
いや、怒ってもいいはずだよな?
あのまま放置してたら、多分僕の貞操は儚くなってたと思う。そうだよ、怒っていいはず。
そう思った僕の気配を察したのか、ディエゴがするんとベッドから抜け出る。
「このまま一緒にベッドに入ってるとラスクに迷惑がかかるから、ちょっと狩に行ってくる」
「えっ」
「結界を張っていくから、鍵はしなくていい」
「ちょっと待ってよ!」
「ラスクが一生俺と一緒にいたくなるような、すっごい獲物、獲ってくるから!」
「待てって!」
「行ってくる!!!!」
その言葉だけ残して、一瞬でディエゴは居なくなってしまった。
「マジか……」
僕はディエゴが出ていったあとのドアを呆然と見つめる事しか出来ない。
「アイツ、人型の時もまったく人の話、聞いてないじゃん……」
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