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第38話 本質は変わらない
呆れてしまってそうぼんやりと呟いたら、次第になんかおかしくなってきた。
本当に本質はあの真っ黒ワンコなんだなぁ。
イケメンですごい冒険者だとしても、僕が『ネロ』と名付けてケンカしたりご飯やお風呂の世話してやったり、一緒に寝たりしたアイツのままで、中身はなんにも変わらない。
「アイツが、獣人かぁ……」
ぽつりと呟いて、考えに耽る。
ディエゴが狩に行ってくれて良かったのかも知れない。おかげで混乱した頭を整理する時間ができた。
獣人と分かった以上、さすがにそれを忘れて飼い犬として可愛がる、なんて事はできそうもない。
狼の姿で甘えられるとついついなでなでしちゃうし可愛いとも思うけど、やっぱりさっき見たイケメンの麗しき御尊顔が頭のどっかでチラつくし。
とはいえ、恋人、かぁ。
「……」
性格は嫌いじゃない。ワガママなくせに憎めなくて、むしろ一緒に暮らしてて楽しかった。
顔も……ぶっちゃけめっちゃイケメンだって思う。見つめられたらドキドキするから、はっきり言って好みなんだと思う。
ただ僕はまだ恋愛なんてした事がないから、好きだって言われても正直ピンとこなかったんだよね。
女の子は可愛いなって思うこともあるし、男の人もカッコいい、憧れるって事はあっても、恋愛的な意味でどうこうなりたいって思った事なかったし。
なんていうか、自分にはあんまり縁がないと思ってたんだ。
孤児だし、薬師としてもまだまだだし。エリクサー作りたいって夢は密かに本気だから、きっと諸国を旅する事になるんだろうし。恋人なんて、自分には関係ないかなって。
でも、ディエゴがあんまり全身で好きだ、好きだって訴えてくるから。
あんなに格好良くて、ゴツくもないのにしっかり綺麗な筋肉ついてて、見惚れちゃうくらい凛々しくて、きっと引く手数多なんだろうと思うのに、僕なんかの事好きだって言うんだよ?
そんなの……。
そんなの……。
「うわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っっっ」
恥ずかしい。
思い出せば思い出す程恥ずかしくなってくる。
僕を見つめる、潤んだオレンジ色の瞳を思い出して身震いした。
ディエゴの低い声。
必死な息遣い。
熱い舌と突き上げてくる怒張。
本当に僕の事、好きで堪らないって全力で訴えてた。
怒ってないかって不安そうに僕を見つめる瞳がたまらなく可愛かった。
カッコいいのに、大丈夫だよって優しくしてあげたくなるの、ギャップ萌えって言うんだろうか。
僕、こんなにチョロかったの!?
好きって言われたら好きになっちゃうタイプだったの!?
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