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19.抱かれたいぐらい君が好き…ってことで(☆)
「永良 」
バスタオルを両手に持ったままの状態で、ぱっぱっと手を叩く。
すると、永良ははっとして――渋い顔をした。
まぁ、歓迎されるとは思ってなかったけどさ、少しは嬉しそうな顔してくれてもいいんじゃない?
「マジでその格好で来たのか?」
「?」
僕は促されるまま自分の体に目を向けた。
赤と黒のジャージ姿。
腕にはデカデカとJAPANと書かれ、胸には国旗がプリントされている。
「そっか。選手団のジャージだったから、やたらと声かけられたのか」
「アホ過ぎんだろ」
「それだけ必死だったんだよ。一秒でも早く君に会いたかったんだ」
「…………」
永良は無言のままプールから上がった。
僕はそんな彼を受け止めようとしたけど――あっさりと躱されて、タオルまでふんだくられてしまった。塩対応にも程がある。
「ねえ、永良。僕ちゃんと約束を守ったよ」
「ああ。今度は俺の番だな」
「親友になってくれるの?」
「…………」
永良は顔を俯かせた状態でガシガシと頭を拭いている。
面倒くさがっている風に見せて、どこかピリついているような気がした。
「前言った通りだ。努力はする。ただ、確約は出来ない」
「辛いなら、無理しなくてもいいよ」
「……はっ。じゃあ、今度こそお払い箱ってことでいいか?」
「違う。もう形にはこだわらないから、とにかくずっと僕の傍にいて欲しい」
「……バカじゃねえの」
永良の語尾が小さく揺れた。
頑なだった彼が見せた、ほんの僅かな綻び。
その奥にあったのは――悲しみだった。
「なっ……」
僕は永良からバスタオルを引っ剥がすと、無理矢理に顔を上向かせた。
「ばっ……っ、この変態!! 見てんじゃねえよ、バカ!!」
永良は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
瞳は潤んで、顎にはぐっと力が籠っている。
「どうしてそんな顔してるの?」
「お前には関係ねえだろ」
「教えて。どうしてもダメなら、ちゃんと諦めるから」
「…………」
永良は目を伏せた。
長い睫毛を震わせて、必死に何かを考えている。
僕は辛抱強く待つ。
ちゃんと諦める、なんて言ってしまったことを心底後悔しながら。
「俺は……っ」
「うん」
「……っ、……!」
永良は何か言いかけて、ぐっと顔を寄せてきた。
頬っぺたに何かが触れる。あったかくて、やわらかい。
「???」
「これが理由だ」
「……は?」
「分かったなら、さっさと――っ!」
それとなく逃げようとする永良の体をガッチリホールドする。
とりあえず、それだけは出来た。
けど、変わらず思考はショートしたままだ。
頬っぺたにキス → これが辛さの原因ひいては僕の親友になれない理由ってこと???
「意味が分からないんだけど」
「だあぁあ!!! 好きだって言ってんだよ!!! このバカ!!!」
「好き? 何を今更」
「!!??」
「好きに決まってるじゃない。何せ君は、僕の強火のオタクなんだから――」
「抱きてえんだよ!!! おめぇのことを!!!」
抱く? ハグならいくらでも……あ。
「君、ゲイだったの」
「そっ、……そうだ。だから、俺はお前の親友にも……他の何にもなれない」
急に大人しくなった。いや……これは……怯えてる?
ああ、そうか。フラれると思ってるのか。
そんなに僕に嫌われるのが怖い?
そんなに僕のことが好き?
――何それ。最高じゃん。
「永良、僕も好きでいいよ」
「……意味分かんねえんだけど」
「君の恋人になってあげる」
顔を寄せて、永良の唇に自分の唇を重ねた。
あったかくて、ふにゃっとしてる。
これがキスか。何だか不思議な感じだ。
「んぅ!? んっ!! はっ!! バカ!! 何やってんだよ!!!」
顔を力任せに押してくる。
首を一回転させんばかりの勢いだ。
「痛いな。君、僕のことが好きなんじゃないの?」
「お前がとち狂ったことしてっから、こーして止めてやってんだろうが!!!」
「僕は本気だよ。君になら抱かれてもいい」
「…………………………………………は?」
「抱かれたいぐらい、君が好き」
「!!!!!????????」
「……ってことで。はい。万事解決」
「…………」
「永良?」
「あう……が、……ばっ……はうあ……!!!!!!!!」
永良は意味不明な言葉……というか、最早『音』を発した後で――ボンッと爆発した。
可愛い。僕は愛おしさのなすままに、もう一度永良の唇にキスをした。
だけど、永良はノーリアクション。変わらず茫然自失の状態だ。
反応がないのが何となく不服で、もう一発。
また無反応だったので、もう一発……と、気付けば目的を忘れてひたすらチュッチュッしてた。
今なら、カップル達がやたらとキスしてる理由が分かる。
凄く満たされるんだ。
だってこれは、恋人である僕にしか出来ないことだから。
「永良……っ、好き……へへっ、なんちゃって。……あ……!」
不意に頭に布がかかった。タオルだ。
意図が分からず、「何?」と戸惑っていると、永良がぐっと顔を寄せてきて。
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