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第2章 大切な人たち5※
自分のデスクについて仕事をこなしながら、頭の片隅でこれからのことを考えた。
仕事に夢中になっていれば、あっという間に昼時を告げる鐘の音 がする。
切りのいいところで仕事を中断し、持ち場を離れる。エドワード様が待っている薔薇の庭園へと走る。
王宮の薔薇の庭園は、王族や血族以外は立ち入れない。
色とりどりの美しい薔薇とその周りを飛び交う蝶や蜜蜂の姿を見るのが好きだった。
ここでエドワード様と出会い、言葉を交わし、そして愛の告白を受けた。
金髪碧 眼 の貴公子が椅子に腰掛け、みずみずしく咲き誇っている黄色の薔薇を眺めていた。
「エドワード様!」
お声掛けすれば、「ルキウス」と名前を呼ばれる。
息を整えているとエドワード様に背を撫でられる。
「具合が悪いと聞いたが、走って大丈夫か?」
「エドワード様は、僕のことを心配してくださるのですか?」
「何を言っている。将来を誓い合った恋人のことを心配するのは、当たり前だろう」
その言葉に胸が熱くなる。思わず僕は、エドワード様へのあふれそうな思いを口にしていた。
「エドワード様、好きです。好き……大好き」
「どうした、何か嫌なことでもあったのか?」
「はい、とても怖い夢を見たんです。エドワード様や大切な人たちを失う夢を……」
エドワード様は僕をのことを力強く抱きしめてくださった。薔薇の香りがする胸に頬を寄せる。
「どうか、ずっとお傍 に置いてください。遠くへ行かないで」
「もちろんだ、ルキウス。愛しているよ」
顎を指先でくっと持ち上げられ、口づけられる。
彼とのキスに酔いしれている間に、エドワード様に抱き上げられる。そのまま近くのベンチへと横たわらされ、着衣を乱される。首筋に愛撫を受け、僕の素足にエドワード様の手が這う。僕はエドワード様の首へと腕を回す。
香油で性急に後孔を解され、彼の勃起したペニスが最奥まで一気に突き立てられる。
「んっ……ううっ!」
僕は自分の口元を手で押さえ、呻き声を押し殺す。
いつもこの瞬間だけは、どうしても好きになれない。痛くて、つらいから。
目に涙を思い浮かべていれば「泣くな」とエドワード様の唇が落とされる。
「エドワード様……」
「動くぞ」と両の足を抱え上げられ、激しい律動が始まる。
僕は感じている演技をする。しかし、僕のペニスは痛みによって萎えたままだ。少しでも気を抜いてしまえば、「痛い」と口を出てしまいそうになる。声を潜め、ささやかに喘ぐふりをしながら、エドワード様が気持ちよくなれるように腰を振る。
絶対にこの人を失いたくない。ノエル様に取られたくない――渡さない。
僕はノエル様への復讐を誓い、彼を亡き者にするための計画を練った。
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