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第7章 第一の試練3*
男たちの言葉に背筋が凍りつく。
無理やり地面に押し倒され、頭と足を押さえつけられる。もがいて抵抗しても、屈強な男たちを跳ね退けられない。
杖も取られて、頼みの魔法も使えない。
地面に這いつくばり、横目で黒服の長 と思わしき人物を睨みつける。
長は温度の感じられない目で僕を見下ろした。
「おまえの手足の腱を切り、動けないようにしてやろう。そのまま魔物たちの餌となれ」
「なっ!?」
「安心しろ、首だけは拾ってやる。エドワード様に、おまえを殺した証を見せるためにな」
生命の危機を感じ、身震いが止まらなくなる。
「まずは足からだ」
「嫌です、やめて!」
ズボンをたくし上げられ、足首にナイフの冷たい刃が触れる。心臓がドクンドクンと大きく音を立てる。
突如「ギャアッ!」と男たちの悲鳴があがった。そして男たちが吹っ飛んでいく。
「なんだ!?」
黒服の長が、男たちの吹き飛んでいった方向を注視し、戦闘態勢をとる。
「ったく、こんなところで人殺しか? 場内荒らしは困るぜ、旦那ぁ」
大剣を肩に担いだ男の人がニヒルな笑みを浮かべた。
長はナイフを手にし、他の部下たちも各々の武器や杖、魔術書を手に取り、男を警戒する。
「貴様、何者だ。名を名乗れ!」
「名乗るほどの者じゃねえ。しがないギルドの一員、さ!」
そうして男の人は長に向かって大剣を振るった。
既のところで長は大剣を避ける。そして部下たちに命令を下す。
「計画、丸つぶれだ。もういい、そいつの首を切れ!」
僕を押さえつけている男のひとりが、ダガーを振り下ろした。僕は目を見開いて刃が自分に向かってくるのを凝視する。
ガキンッ! と金属音がしてダガーの刃が折れ、飛んでいった。
ダガーの刃があったところに、ブーツを履いた足がある。
次の瞬間・男の左頬に左の拳がめり込んだ。暴れ馬も驚くほどのスピードで、洞窟の壁際へ男が吹っ飛んだ。
栗毛のポニーテールヘアをした女性が、次々に男たちを殴り、蹴っていく。
大剣を手にした男の人とともに黒服の男たちを倒す。
「クソッ! 奴隷と変わらぬ虫けらの分際で!」
自分の背丈ほどの長さをした金の杖を持った男が、攻撃魔法を仕掛けてくる。
瞬間、身体がフワリと浮いた。
攻撃魔法を仕掛けようとした男の両手に小型ナイフが刺さる。男の持っていた金の杖が炎に包まれ、灰 燼 に帰す。
長い白髪と長い顎髭を蓄えた老人が木でできた杖を頭上高く掲げ、僕の周りに防御魔法を作った。そして、老人とは思えない猛スピードで走り、男たちを杖で薙ぎ倒した。
「エリザ、やつらはただの人間じゃ! 頭に来たからといって、殺すでないぞ!」
「わかっていますわ、おじい様! ただ、虫の息にはしますけどね!」
何が起きているのかわからず、ひどく頭が混乱している。
「大丈夫かね?」と赤い衣を纏ったオールバックの異国人に聞かれ、コクリと頷く。
腕を拘束していた縄を取ってもらう。じんじんと腕が痺れている。「飲みたまえ」と彼に手渡された回復薬の小瓶を口にする。瞬間、腕の痺れが治まり、じんじんと痛みのあった首筋の傷が消える。
「あなたたちは……いったい?」
「マックスが言っただろう。しがないギルドさ。とりあえず話は、こいつらを一掃してからだ!」
いつの間に取り返したのだろう? 赤い衣を纏った男の人は、黒服の男たちが奪ったはずの僕の杖を、僕に渡してくれた。
そうして彼も両手剣を瞬時に手に取り、戦いへ参加した。
ギルドの人たちは信じられないくらいに強かった。悪魔や魔物を倒すのを生業としているのが、動きを見ればわかる。彼らの動きには無駄がなく、戦い慣れしている。
だけど――黒服を纏った男たちは、まるで宮廷魔術師や歴戦の騎士のように洗練された統率のとれた動きで、ギルドの人たちを凌駕するほどに強かった。
とうとうギルドの四人は、黒服の男たちに追い詰められてしまう。
「ったく、こんだけ殴っても、蹴っても倒れないって、あり得ないでしょ! こいつら、鋼か鉄でできているの? それともゾンビ?」
「大方、防御の御印と速攻の治癒魔法を掛け合わせておるんじゃろう。王宮の魔術師たちがよく使う技じゃ」
「なるほど、王宮の暗殺部隊ってわけか。万事休すだな。……メリー、緊急退避はできそうか?」
「いいや、恐らく駄目だろう。退路を塞がれているし、転送魔法 を使おうとした時点で、魔法封じを食らうだろう」
長はゴキゴキ首を左右に鳴らし、ふうと息をついた。
「まったく手のかかる連中だ。これだからギルドの連中はいやなんだ。隷属民と変わらない身分の低い者のくせして正義漢ぶり、こちらの手をわずらわせるのだから」
大剣を手にした男の人は、眉間に皺を寄せて長を指差した。
「オレらのことを馬鹿にするのは良いが、そっちこそどうなんだ。暗殺はフェアリーランド王国や、その周辺国で禁止されている。法律上やってはいけない行為だとわかっているうえで、こんな真似をしているのか?」
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