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第10章 あべこべな話3
「これはこれはエリザ嬢。いやー、相変わらず背筋もこおる恐ろし――見ているこっちが惚れ惚れするような美しさ! 結婚を控えて、ますます男みたいなペチャ――スレンダーで均整の取れた肉体に磨きがかかっていますね。おじさん、ちっちゃい頃からエリザ嬢のことを見ていたから、うれしくなっちゃう!」
――結婚? まさかと思い、マックスさんを見上げる。
彼とばちりと目があう。
すると何を思ったのかマックスさんは、含み笑いをした。
「オレじゃねえぞ。あのじゃじゃ馬娘の相手はメリーだ」
「メリーさんとですか!? てっきり僕は、エリザさんとマックスさんの仲がよかったので、おふたりが結婚するのかと思いました」
「ちげえよ」と間髪入れずにマックスさんが答えた。「あいつは、オレにとって娘や妹みたいな存在だ。先生のように血の繋がりはないけど、自分の子どもみたいに大切に思っている。メリーだから、嫁入りさせる気になれたけどな。二十代後半で、もうすぐ結婚するっつーのに、なかなか親離れできねえ。」
ふとマックスさんの言葉に違和感を覚えるものの「そうなんですね」と胸を撫で下ろす。
突然テーブルの上にあったサギーさんの陶器のカップが飛んでくる。カップはマックスさんの頭にクリティカルヒットした。
「いってぇ……」
マックスさんはズルズルと足を折り、床にうずくまった。
「マックスさん!」
「マックス、大丈夫か!?」
メリーさんの呼びかけに、マックスさんは返事をしない。急いでカバンから回復用の薬草を取り出し、ひどく頭を痛がるマックスさんに手渡す。
「ちょっと、そこの変態親父。普段なら絶対に耳にしないような甘ったるい声で、喋らないで。気持ち悪い」
薬草をわし摑んで口に突っ込んだかと思うとマックスさんは勢いよく立ち上がり、エリザさんに対して怒り出す。
「おい! どこの世界に兄貴や、父親にマグカップを投げつける娘がいる!?」
「目の前にいるでしょ? あんたこそ、かわいい娘にこんな悪役じみた役回りをさせるなんて、どうかしているんじゃない?」
「何を言っているんだ? たしかにおまえはお転婆だけど、そんなことをするやつじゃないだろ!?」
マックスさんがエリザさんに怒る。
いつもならマックスさんに突っかかるエリザさんが、紫紺色の目でじっと僕を見る。
「てっきり『僕の心にはエドワード様がいるんです〜』って、嫌がると思っていたのに……さすがはエドワード王子の元恋人。去る者追わず来るもの拒まずのクソビッチね」
「よせ、エリザ! いったいどうしたんだ!? いつものきみらしくないぞ!」とメリーさんが、彼女の肩を摑む。
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