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第13章 違和感2
(そのために特訓をしているんだ。何もしないでいるよりはずっと効果がある。それにおまえには、オレたちパーティがいる。仲間は助け合い、支え合うもの。新人のおまえは大船にでも乗った気持ちで、自分のできることを精いっぱいやればいい)
(はい、とても心強いです)
ひとりじゃない。
女神様の言っていた通り多くの人の手を借りて、ここまで来れたことに、胸が熱くなる。
ふとエリザさんの顔が浮かんで、彼女のことを尋ねる。
(マックスさん、エリザさんと出会ったのは、いつ頃ですか?)
(えっ……)
(エリザさんは妹みたいな存在だと言っていましたよね。はちみつミルクの件で奴隷に落とされたと聞きましたが、クロウリー先生とエリザさんは、どうやって再会できたんですか?)
マックスさんからの返事がない。しばらくして(あ、ああ、そうだな)と戸惑いがちな様子で、喋る。
(先生から「奴隷となった孫娘を見つけてほしい」って頼まれて、さがし回ったんだ。そしたら剣闘士をやっているって情報が入ったから、金を積んでエリザを奴隷から庶民へ買い戻した。先生の孫娘だとわかるとエドワード王子たちに狙われる危険性があるんで、先生が買い取った養女ってことにしたんだよ)
(そうだったんですね。マックスさんとエリザさんの仲があまりにもいいし、戦うときも息がピッタリだったから、最初はご夫婦か恋人なのかと思っちゃいましたよ)
(なんだよ、それ。天と地がひっくり返ってもあり得ないな!)
語尾を強調しているマックスさんの様子に、声を立てて笑ってしまう。
(おふたりはいつ出会ったんですか?)
しかし、マックスさんの返事はいつまで待ってもなかった。
寝ちゃったのかな?
僕は残念だなと思いながら、布団の中で目を閉じた。明日も彼に会えることがうれしくて、口元が緩んでしまう。
実家にマックスさんがいて、食事をともにしたり、特訓をつけてもらえる。夜になったら、今夜のようにふたりで内緒話でもするみたいに会話ができるのだろうか?
「目を閉じているだけでも寝ているのと同じような効果がある」とお医者様が言っていたので僕は目を閉じながら、今夜話したマックスさんの話を振り返る。
そして、はたと違和感に気づく。
マックスさんとエリザさんのことだ。
彼らの誕生日を知らないから正確なことはわからないが、四歳から八歳しか違わないはず。
それなのに彼はサギーさんのところで、エリザさんのことを“娘みたいな存在”“自分の子どもみたい”と言っていた。普通はそんな表現を使わないだろう。
僕の手の平に蛇の絵を描いて蛟の主を喚んだこと、歴史学者や考古学者ではなく剣士なのに、妙に昔の話に詳しいことも変だ。あの魔法の船だって……。
半エルフの人間は寿命が長いと訊く。エルフ自体が二千年以上生きる不老不死だ。だが彼らには耳が尖っているとくちょうがある。人間とエルフの子であるハーフエルフも二百から五百年の寿命があると聞く。
でも、ハーフエルフの容姿はエルフ同様、天上に棲む神々のように美しい。
しかし、マックスさんの耳は尖っていないし、男らしくはあっても美しい容姿をした人ではない。
いったい、何者なのだろう。
内心、首を傾げているうちに僕は眠りに落ちた。
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