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第13章 変革2

  *  その後、転移魔法を使い、一発でイワーク洞窟の前に辿りつくことができた。  僕も前衛に立つ形で上級魔法を使う。クロウリー先生のように瞬間的に詠唱できないし、威力も低いが魔法と魔術を使えた。  そしてビックゴブリンが住み家にしていた最深部で、奇妙な器具を使い、現場検証をしている魔道士の人たちに挨拶をする。  その場ですぐに七匹のゴブリンと、お姉さんたちのカジノを開いた。ビックゴブリンとゴブリンたちは手足に拘束の魔術をかけられた状態で、カジノの清掃や機械の調整をさせられていた。  そのまま魔道士の人たちが、七匹のゴブリンとお姉さんたち、そして僕とマックスさんから事情聴取をした。  そうして僕が召喚した七匹のゴブリンとお姉さんたちの力を借りてビックゴブリンを倒したこと、マックスさんたちが嘘をついていないこと、ビックゴブリンたちが魔王の元へ向かいながら町や村を襲っていないことが立証された(ビックゴブリンたちは、「魔族用の牢獄にいる方がマシだ!」と魔道士の人たちに泣きついた。が、魔道士たちは、お姉さんたちの下僕(しもべ)として三百年働き続けるよう、命じた)。  夜までかかると思っていたが、思った以上に早く終わった。転送魔法を使い、館の前に無事につく。 「合格だ」とマックスさんから、お墨付きをもらえた。「短期間だが、かなりできているよ。頑張ったな」  背中を叩かれ、褒められると胸が擽ったい気持ちになる。 「マックスさんのおかげですよ。こんな風に、いろんな魔法を使えて、とてもうれしいです」 「そう言われると照れるな。けど、おまえが音をあげずに頑張たのも、たしかだ。そこんとこ誇れよ?」 「はい! 他のこともいっぱいできるようになりたいので、これからも教えてくださいね」 「もちろんだ。後は防御魔法のテストだな。そろそろメリーも全快になっているだろうし、エリザや先生の疲れも取れた頃だろ。あいつら三人から攻撃を受けても防御魔法を使えるかどうかテストだな」  クロウリー先生たち相手にかなうわけがないとマックスさんに抗議をした。  しかし、彼は「それくらいできなきゃ、暗殺部隊と偽の神子の両方から攻撃を受けたときに、死んじまうぞ。オレの特訓は厳しいって言ったろ?」と僕の肩を抱く。 「ううっ……エリザさんの蹴り、鳩尾や顔に入ったら、絶対に痛いです」と泣き言を言えば、頬を軽くつねられる。 「ほら、魔法の船まで転移魔法! エリザに蹴られたくないなら、防御魔法の特訓をしっかりやるんだ」 「きついですね。そうは言っても、防御魔法でマックスさんの攻撃を防げたことは、一度もないですよ」 「馬鹿、こっちだって長年剣士として働いているんだよ。プロが卵から(かえ)ったばかりのヒナにしてやられたら立つ瀬がないっつーの! ほら、早く」  マックスさんに急かされて転移魔法の詠唱をしようとしたら、背後の扉が勢いよく開かれる。  僕らは後ろを振り返る。オレインだった。  オレインは出てきたかと思ったら「お待ちください!」と叫んだ。 「オレイン、どうしたの?」  僕は詠唱をやめ、彼に問いかける。  オレインの顔はぶどうのように紫色になり、お腹をひどく空かせたクマにでも遭遇したような表情だった。 「アレキサンダー様が出兵することになりました! 相手は千年前に魔王の部下だった者ども。すでにフェアリーランド王国の南端の村や小さな町を襲っているそうです!」  恐れていたことが遂に起きた。

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