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第15章 気まずい雰囲気
クロウリー先生の作った薬を口にしたら、すぐに身体が落ち着いて頭がハッキリした。
急いで水と風の魔法を使って精液の汚れや匂いを落とす。しかし石けんで丹念に洗った訳じゃないから、そういう匂いがする。僕の身体にはマックスさんの匂いが移り、マックスさんの身体には僕の香水の香りが移ってしまった。
鼻のいいものならそういうことをしたのかと、すぐに気がついてしまう。
魔法をかけて直した衣服に袖を通しながら、さっきまでの様子が嘘みたいなマックスさんに声を掛ける。
「あ、あの……マックスさん。先ほどは醜態をお見せしてしまい、申し訳ございませでした。どうか先ほどのことは忘れてください」
「はあ!? 忘れられる訳ねえだろ。網膜に焼きつけたわ!」
くわっとなって、力説するマックスさんにギョッとする。
「あのように乱れたりして、はしたないし、見苦しかったでしょう? 不快な思いをさせてしまいました」
「オレは見苦しいとか不快なんて思ってない」と言い切られてしまい、困惑する。
「どうか、ご無理をなさらないでください」
「無理なんかしてねえよ。オレは、おまえとああいうことができて役得っていうか。かわいい姿を見れて、うれしかったし、眼福だったっつーか……」
その発言に顔だけでなく耳や首、脳みそや胸、全身が熱くなる。
「とにかく気持ち悪いなんて、これっぽっちも思ってねえから! おまえは、どうなんだ? オレなんかとあんなことしてキスをして……いやだったか」と自信なさげな様子で、マックスさんがしゅんとしてしまう。
「いやじゃなかったですよ。とても気持ちよくて、頭がフワフワして、全身が蕩 けちゃいそうになりました」
「なっ、なら、いいんじゃねえの? お互い好き合っているんだから普通のことだ。そうだろ!?」
「そ、そうですね……」
なんだか妙な空気になり、気恥ずかしい。
テントが消えると、そこにはグッタリとしているメリーさん、ジトリとした目で僕らを見るエリザさん、孫を見るおじいさんのようなクロウリー先生がいた。
「悪いが、その変にしておいてもらえないだろうか。ここは他人の住居で村人たちの姿もある。緊急用に出したものを利用してイチャイチャされては困るぞ」
「あたしが必死こいて走ったっていうのに。テントの中で乳繰りあうなんていい度胸じゃない」
「いやあ、とうとう長い冬が終わり告げ、春が来たということか。若いというのはいいものじゃなマックス」
「おまえら……」とマックスさんが口元を引くつかせるものの三人に強く出れずにいる。
「ご心配をお掛けしました」と謝っていると転移魔法を使って、宣旨長官が突如として現れた。
「ルキウス殿、お久しぶりです。息災そうで何よりです」
「長官、なぜここへ?」
「王様の命です。マクシミリアン・アルティマトゥーレ様とルキウス・クライン殿を祝賀会にご招待します」
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