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第17章 第三の試練5

 巻物の外装が青から赤に変わった。  マックスさんが巻物を広げて目を通し、顔を上げてサラマンダーとドラゴンへと目線をやった。 「これでオレの呪いも解けるのか?」 「左様、お主もずいぶん長く苦労しのう」とサラマンダーが頷く。 「いや、まだだ。魔王を再度封印するまでは終われない」 「ならば我らもふたたび力を貸そう。お主とは長いつき合いだ。魔王との戦の際はせがれたちだけでなく、勇猛な我が子孫の(つわもの)たちを送ろう」とドラゴンが目をつぶる。 「メリー、転移魔法でサギーのところまで頼む」 「ああ、わかった」とメリーさんが相槌を打つ。  僕はショックのあまり突っ立っていることしかできなかった。 「ルキウス、ボサッとしてないでよ、サギーのところへ帰るわよ!」  まるで水中に身を沈めたかのようにエリザさんの声が、ぼんやりとしか耳に入らない。  マックスさんがこちらへ駆けてくる。 「どうしたルキウス。疲れたのか、それとも具合が悪くなったのか?」  はちみつのような、金色の瞳をじっと見つめる。 「あなたは人間ではなく神様なんですか?」  マックスさんが言葉をなくし、立ち尽くした。 「『裁定』の神をいきなり召喚しました。祝賀会のときも詠唱なしで魔法を発動させた。ドラゴンやサラマンダーとも長いつきあいだという」 「それは……」 「マックスさん、神官たちをどこへやったのですか?」 「ルキウス殿、安心せい。あそこは魚も果実も豊富な島じゃ」 「クロウリー先生、マックスさんは何者なんですか?」 「ルキウス殿……」  困ったような表情を浮かべたクロウリー先生が言葉に窮した。 「ルキウス殿、そんな風にマックスを責めないでくれ」とメリーさんに諭される。「悪魔は倒した。神官たちも死んでいない。それでいいじゃないか」 「……あなたたちは、僕に何を隠しているんです」 「だから、さっさと言えばよかったのに……」とエリザさんが、ボソリと呟く声がする。 「赤毛の青年よ、そのようにマクシミリアンを疑わないでいでくれ」 「彼は、お主に嫌われるのではないかと恐れを抱いているのだ」  サラマンダーとドラゴンの言葉に耳を傾けながら、俯く。 「そなたの望みは叶う」 「そして英雄は間もなく姿を現す」

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