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気まぐれ猫は今日も快楽を乞う

「りょーう、ねぇ、涼ってばー」 構え、と言わんばかりに、蒼が俺の隣へ座る。 構わずに目の前のキーボードへと意識を集中させていれば、しなやかな身体をぐい、と伸ばして視界を遮るミルクティーの艶やかな髪。 「おい、画面見えないんだけど」 「ねーぇ、涼」 ヘーゼルの瞳が俺を見据える。吸い込まれそうな妖艶な光が宿るその双眸の奥には、隠しきれない欲が見え隠れしていた。 「これ、終わったらな」 「あとどれ位?」 「ん……三十分」 「やだ」 「やだじゃねぇ」 普段は飯を食うぞと誘っても、買い物行くぞと腕を引いても、微動だにしないクセに。 ヤりたい時だけは、積極的なんだコイツは。 「我慢しなさい」 「えぇ……」 俺の腿に身体をすり寄せる蒼を軽く小突く。 「おい、当たってんぞ」 「……当ててる」 耳元で囁く蒼の呼吸は、心なしか上がっている。発情期の猫か、お前は。 「……十五分。」 「ん。待ってる」 満足げに呟いた蒼は、俺の耳をぺろりと一舐めして、漸く身体を離す。一瞥すれば、切れ長の眼がゆるりと弧を描いていた。 街を歩けばひっきりなしに声を掛けられる、類まれなる美しい容姿。白磁の頬が、興奮と期待で薄らと紅く染まっている。 ーーくそ、勃った。 今夜は絶対泣かす。いや、今日だけじゃないけど。

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