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 悲しみよりも、羞恥、怒りの方が大きかった。  快感から放り出されるように性器を引き抜かれたと思えば、一人で立っていることができず、そのままずるりと床へと倒れ込みそうになったところを「近江屋君!」と慌てて駆け寄ってきた徳永に抱きかかえられた。  汚れるから離れろ、そう言いたいのに声も出ない。性器を引き抜かれた後、どろりと溢れる精液が腿から垂れるのを感じながら俺は必死に意識を保とうとした。 「……っ、馬場、やりすぎだ」 「そんなこと言って、お前も興味が会ったんだろ? こいつに」 「――こいつの身体に」背後から伸びてきた馬場の手に尻の皮を抓られ、「ぃ゛っ」と大きく震える。「このやろう」と回らない呂律で馬場を睨みつけようとしたとき、そのまま馬場に鼻の頭を摘まれる。 「っ、ぐ、う゛……っ!」 「良い様だな。……ドM野郎、ほら、お前のせいで汚れた。舐めて綺麗にしろ」 「……ッ!」  ただでさえ呼吸すら整っていない中、鼻を塞がれ、そして唇に押し付けられる性器にぎょっとする。  自分の精子で汚れたくせにとんでもない言いがかりだ。絶対しゃぶるものか。こんなことするくらいなら窒息死でもした方がマシだ。  そうふいと押し付けられるそれから顔を背けようとすれば、そのまま精子で汚れた性器は人の頬から唇までねっとりと汚してくるのだ。 「っ、ざけんじゃね――んむ゛ッ!」  あまりの不快っぷりに堪らず怒鳴ったのがまずかった。開いた唇にねじ込まれた二本の指。馬場のやつはそのまま人の顎をぶっ壊すのかという勢いで顎ごとこじ開けるのだ。 「ぅ゛、あ゛……や゛……っへろ……ッ! ぉ゛……っぶ、……ッ!!」 「歯は立てるなよ。……つっても、これじゃ無理か?」  自分のが太いから、とでも言いたげな顔が、笑い方が死ぬほど腹立ったがそれもすぐ、喉まで一気に塞いでくる性器に吐き気を覚えた。  野郎のものをしゃぶるのは初めてではないが、それでも久古のものではないと思うとただ具合が悪くなる。 「は、へろ……ぉ゛……っ! ん゛……っぅ゛……ッ!!」  吐き出したい、そう思うのに俺の意思とは関係なく太い性器は舌の上を滑るように咥内を犯す。  歯を立てようにも、そもそも顎を閉じることができない。限界まで開かれた口の中を行き来し、頬の裏側の粘膜までもねっとりと精子で汚れた亀頭をこすり付けられれば目眩を覚えた。 「ん゛、ぅ゛……っ」 「は……ッ、黙れば悪くねえな」 「……ッ、う゛、ぶ……ッ!」  後頭部を掴まれ、そのままやつの腰に向かって頭を押さえつけられる。鼻も口も塞がれそうになり、喉ちんこを掠めて舌の付け根の更に奥、喉の器官までにゅるりと犯してくる馬場の性器に声すらもでなかった。  拒もうと締め付けるのが余程いいらしい。呼吸を荒くした馬場、舌の上のものもその呼吸に合わせるように鼓動し、膨張する。 「んっ、ぅ……っ、」  先程までの性行為の疲労もまだ残ってて、更に酸欠の状態で頭がクラクラしてくる。  そんな中、満足げな顔をしてこちらを見ていた馬場はそのまま徳永へと視線を向けた。 「徳永――お前も混ざれよ」  ――何を言ってるのだ、この男は。  ふざけたことを吐かし始める馬場に呆れ、思わず言葉を失ってしまう。 「見てばかりじゃつまらないだろ? ……それに、こいつはお前を襲った加害者でもあるわけだしな」 「ん゛、ぅ゛……ッ!」 「チッ……うるせえな、暴れるなって言ってんだろ」 「う゛……ッ!」  ふざけるな、と抗議しようとしたが、口の中に収まった野郎のブツが邪魔でもがもがと鼻息を荒くすることしかできない。  息苦しさのあまり、酸欠になりかかっているようだ。感情的になればなるほど脳味噌が茹で上がっていくようだった。 「……それに、“それ”。そのままにしておくの辛いだろ?」  一瞬、馬場がなにを言っているのか分からなかった。  俺には徳永の顔も様子も分からない。それでもこの状況、流れからして“それ”がなにを指しているのか分かってしまった。  そんなわけねえだろ、と冷や汗が滲む。  そして、 「……っ、近江屋君」  思いの外、先程よりも近くなった徳永の声に背筋が凍りついた。 「ん゛、う゛」 「……ごめん、近江屋君」 「なんで謝るんだ。お前は悪くないだろ」 「ふ……っ、ぅ゛……」  ――冗談だろ、徳永。  振り返ろうとしたが、後頭部を掴んだ馬場がそれを許さない。その代わりに、先程まで馬場の性器が突っ込まれていたそこを誰かの指で広げられ、思わず身を引きそうになった。  が、がっちりと腰を掴まれてしまい、それは叶わなかった。  そのまま挿入される指は明らかに馬場のものとは違う。ぬちぬちと音を立て、中に溜まっていた精液を掻き出すように指が中を優しく引っ掻くのだ。 「ん゛……っ、ふー……ッ!」 「喉の締まりが急によくなったな。……ほら、そのまま集中しろ。そのよく回る舌を引っこ抜かれたくなかったらな」 「……ッ、……っう゛……」  何が、起きてるのか。自分がなにされているのかも、頭では考えたくなかった。  ……背後に立ち、人のケツに指を突っ込んでくるこいつが誰なのかも。  集中しろ、と顎を掴まれ、再び後頭部を掴まれ、まるで喉全体をオナホかなにかみたいに見立てて緩く出し入れする馬場。その度に口の中で混ざりあったやつの体液と唾液がぐちゃぐちゃと音を立て、咥内と下半身、どちらからも与えられる刺激により咥内の唾液の分泌量は増す。 「ッ、ふぅ゛……ッ」 「馬場、やっぱり近江屋君苦しそうだ」 「それは喜んでるって言うんだよ。ほら、こいつの下半身を見てみろ」  そう言う馬場に性器を靴先で軽く蹴り上げられる。未だ芯を持っていたそこは、弾かれるような刺激に耐えきれず思わず震えた。それを見て、背後の徳永が小さく息を吐くのだ。 「……っ、近江屋君」  ある意味、あいつの顔が見れなくて良かったのかもしれない。  どういうつもりなのだとか、色々言いたいことはあるが、それよりも軽蔑されるのが一番堪える。  見るな、と念じながらも目を瞑ったときだった。中に溜まった精液を掻き出し終えた徳永の指が引き抜かれたと思いきや、今度は尻の割れ目の辺りにぬるりとしたものが触れた。重み、そしてその弾力。割れ目に這わせるよう添えられたその性器の感触に、堪らず息を飲む。 「……っ、ふー……ッぅ゛……ッ」  まさか。待ってくれ。  そう止める暇もなかった。  既に先程、馬場の挿入により散々広げられ、強制的に受け入れられるために慣らされたそこは、少し腰を動かしただけでぬぷ、と濡れた音を立てて飲み込んでいく。 「ふ、ぅ゛……ッ!!」 「近江屋君……っ」 「ぅ゛、んんぅ゛……ッ!」  背後から覆い被さってくるように腰を沈めてくる徳永。逃げることもできないまま、今までに味わったことのない圧迫感に喘ぐこともできなかった。  徳永はそういうやつだと思わなかった。  だからこそ余計、入り込んでくる亀頭により一層頭が真っ白になる。 「ふ、ぅ゛、む……ッ?!」 「く、ふ……ッ、近江屋君……ッ!」  嘘だろ、などと言ってる余裕もなかった。背筋が震え、逃げようとしても動けない。  腰を捉えたまま入り込んでくる性器に、精液で既にぐずぐずになっていたそこはあっという間に徳永のモノに合わせて形を変えていく。  ぐぷ、ぐぢゅ、と音を立て、腹の中で泡立つ精液。それに構わず奥まで入り込んでくる性器に堪らず腰が震えた。 「そいつのケツだけは悪くないだろ?」 「……っ、は、そう……だな」 「――ッ、ふ、ぅ゛……ッ」  一応はこちらを気遣っているつもりのようだ。ゆっくりと、それでもより性器の感覚が浮き彫りになっていくようなねっとりとした腰の動きに耐えきれず、下腹部に力が溜まってしまう。 「ふーッ、ぅ゛……ッ、うぅ゛……ッ!」  逃げようと浮く腰を掴まれたまま、更に深く腰を打ち付けられる。濡れた音を立てながら、腰を打ち付けるように突き当たりを亀頭で押し上げらる都度頭の中が真っ白になっていく。  逃れようと這いずったところで逃げ場などなかった。片腿を掴み上げられた状態でそのまま隙間なくみっちりと性器をねじ込まれる。ピストンの度に硬度を増し、更に太くなったそれで粘膜ごとただひたすら、一方的に犯された。 「う゛、ん゛……っ! う゛……っ!」 「近江屋君、君は……っ」 「ふ、う゛――!」  男相手に体の相性なんざ考えたことなんかなかった。  それでも、徳永のものは性器の長さ、太さ、カリの位置がすべて絶妙に俺の弱いところに当たるような構造となっており、ゆるく性器を出し入れするだけでもその摩擦でイキそうになってしまう。散々馬場のせいで慣らされてしまい、感度が高くなっているという理由もあるだろう。それでも、だからこそ余計耐え切れなかった。 「ッぐ、ん、ぅ゛う……ッ! ふ、う゛――」  どくどくと脈を打ちながら勃起した性器に熱が集まる。徳永の性器で突き上げられた瞬間、白濁混じりの体液を床にまき散らしながら俺は何度目かの射精を迎えた。  それから間もなく、締め付けた拍子に徳永は射精する。二人分の精液で満たされていく。逃れることなど出来なかった。  さっさとこいつらを満足させれば解放されるだろう。  そんな俺の考えは甘かったのだと思い知らされることになる。  それからは、地獄のような時間が続いた。  気付けば再び地下牢――ではなく、俺は見慣れない部屋の中にいた。  体は丈夫な方だと自負していたが、それでもこんな仕打ちを受けてもピンピンでいられるわけがなかった。  途中で気絶して目を覚ましてから、どうやら風呂に入れられたらしい。それでも鼻腔には精子の匂いがこびり付いているようだった。  正直、まだ自分が生きているのが不思議なくらいだった。馬場に見つかったときからその覚悟はできていた。  だからこそ、わざわざ風呂で現われ、おまけと言わんばかりに服を着せられている現状に戸惑った。  ――もしかして、徳永が根回ししてくれたのだろうか。  そこまで考えて、流れとは言えど徳永に抱かれたときのことを思い出し、うんざりした。 「……ッ」  あれだけ中で出されたものも綺麗になっているのが余計腹立たしい。  少なからず馬場のやつが自分から俺を風呂に入れて服を着せるなどという発想に至るわけがないので、徳永のお陰であることは間違いないが……。  床の上、相変わらず後ろ手に縛られたまま寝転がされていた俺はなんとか身体を傾けて部屋の様子を観察する。  そして、ハンガーに掛けられたコートを見て、ここが馬場の部屋だと気付いた。最悪だ。これならまだ地下に閉じ込められていた方がマシだったのかもしれない。 「っ、クソ……」  幸い部屋の主は見当たらないが、このままではいつ戻ってくるか分からない。  その前になんとかこの拘束を解いて抜け出さなければ。  そんなことを試み、拘束具と格闘すること数分。一向に拘束が外れる気配はない。  ただ主に腕に疲れがきて、諦めた俺はそのまま仰向けになって天井を見上げた。  部屋の中は暖房がつけられていたので寒いことはないが、心の中は冷え切ってるようだ。  これからどうしようか。このままだと生きて外を出たところで、まじで馬場に警察に突き出されることには違いないだろう。  それから、久古のことも。  前に久古の家に遊びに行ったときのことを思い出す。久古の家族になんて言えばいいんだ。  そんなことを考えてはまたむしゃくしゃし、やはり馬場のやつをとっ捕まえて真犯人を捕まえるしかないのではないか。そう意気込んだときだった。  いきなり馬場の部屋の扉が開く。まるで扉ごとぶっ壊すような勢いで開かれるその扉にぎょっとしながら飛び起きれば、そこには会いたくねえ顔があった。 「……っ、馬場、テメェ……」 「……」 「……?」  いつもならば『うるさい、豚が喋るな』とか言っていきなりぶん殴ってきそうなものを、目の前のやつは珍しくただ俺を見ていた。  それが余計気持ち悪くて、暖房があるにも関わらず寒気がする。 「……おい、なんだよ」 「……」 「なんか言ったらどうだよ! おい!」 「……」  本当になんなんだ。腹でも下したのか?  気持ち悪くて、思わずじり、とケツだけ動かして後退ったとき。馬場が俺の前に膝をついた。  視線が近くなり、「うお!」と咄嗟に跳ね退こうとしたときだった。 「……オーナーさんが、襲われた」  それはぽつりと、俺に聞こえるだけの声量で吐き出されたのだ。

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