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第6話 こんな身近に繋がりが!
取り敢えず話に区切りがついたので、俺は自分の部屋に戻った。奥の勉強机では、智洋が何やら参考書を広げて勉強中の様子。
「おかえり~」
ちらりと視線を投げて言われ、自分も机に向かいながら「ただいま」と答えた。
「さっきはゴメンな。俺だけ勝手に……」
「あー、まあいいよ。びっくりしたけどさあ」
かりかりとノートに書き込んでいた手を止めると、智洋は背もたれに腕を載せて振り返った。
「全部聞こえたわけじゃねえけど……軸谷さんと何かあったのか?」
さらっと問題発言です! 俺は驚いて目を丸くした。
「何? あの人軸谷って言うの? 何で智洋知ってんの!?」
がばっと両肩まで掴んでしまった俺に、智洋は引き気味だ。
「じ、軸谷浩司 だろ……? 俺は直接話したことないけど、姉貴からよく名前聞いてたから」
「えっ、姉さんって星野原?」
「んにゃ、玲光女学院なんだけど、何か街中で何度か見掛けて色々あったらしくて、最初は怒ってたけど途中からなんてーの、もうメロメロ? もう一人一緒に居たウォルターさんと自分の友達とグループ交際っぽい遊び仲間だったかな~」
「ふ、ふーん……」
「姉貴の友達がかなり可愛い人でさ、ウォルターさんに一目惚れして逆ナンしたとかなんとか」
まああれだけ目立つ人だから、女なんて放っといても群がってきて選り取り見取りなんだろなあ。羨ましい! けど今はそれは置いといてー。
「で、今でも姉ちゃんとは交流あったり?」
「いや、どうかなあ……友達がなんか色々あって手ぇ引いて、一人だったらなかなか会ってはもらえないようになったんじゃないかな、多分。
二年の一時期は有名なヤンキーと付き合ってたみたいだし、普通の女は付き合えないんじゃね? 危ないっつーか」
「危ない……」
「だって和明も変な場面で出くわしたんだろ? 確かに恩人なのかも知んねーけど、一緒に居たら巻き込まれることもあるんじゃね?」
「でもあれは俺が先に巻き込まれてそこに来てくれてっ」
「だけど逆の方が恐いじゃん」
「けど……」
力が抜けて、両腕がだらりと垂れ下がる。そんな俺を慰めるように、今度は智洋からぽんぽんと頭を撫でられた。
携にはよくやられるけど、そんなに触りやすい頭なんかな~。
「ここの中では大丈夫だろうけど、街で一緒に居ない方が賢明だよ。まあ取り敢えずは明日に向けて復習しとこうぜ?」
きょとんと首を傾げる。
明日? 明日って入学式だよな。
「なんだよ、余裕だなーおい。式の後三科目実力考査だろ」
半分呆れ半分羨ましそうに首を竦めた智洋は、くりんと体を戻すとまた参考書に手をやった。
「春休みの課題以外、俺勉強やってねーからやばくって。悪いけどおしゃべりはここまでな」
教科書などを購入した日に手渡されたプリントの束は、明日提出だ。確かにその宿題なら自分もなんとか終わらせたけど……今までにないくらいめっちゃ量多かったっすよ!
それ以外に勉強って……!
涙目になりながら、慌てて俺も机の引き出しからノートや教科書を引っ張り出した。
うう……携め……暢気に昼寝に入ったから俺は部屋に戻ることにしたっつーのに、なんで教えてくんねーんだよーっ!
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