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第7話 入学式

 さて翌日いよいよ入学式。まあ粛々と式次第がこなされていく中、俺は体育館の前半分を占めている上級生の列の中からどうにかして浩司先輩を見つけようとしていた。  とはいえ、パイプ椅子に腰掛けていて全員が平面に居るわけで、見えない部分のほうが多い。途中から諦めてようやく壇上に視線を向けると、生徒会長とやらが挨拶の後の連絡事項を告げているところだった。  なんだー、もうすぐ終わりか。って俺、殆ど聞いてなかったし……。  何となく、学園長が外国の人で運営しているのも今日は来ていないけど外国のどこかの企業の人っていうのは憶えてる。けどまあそれが誰でも俺には関係ないしなあ。  生徒会長は、黒髪をセンター分けしたひょろりとした長身の人だった。顔ははっきり言って地味……俺が指摘するのも申し訳ないんだけど、寮長みたいに華があるわけじゃなくて喋り方も淡々としている。 「──というわけで、校歌は本校と同じということになります。また、学園祭については本校では秋にまとめて行っていますが、こちらでは新入生の歓迎会の意味も込めて来月末に体育会を行い、十月に文化祭を催す予定になっています。人数の関係で組み分けはシンプルに赤白にしました。一年生はクラスの中でランダムに半々に分けようと思いますので、実力考査の後のロングホームルームでジャンケンでもくじ引きでもして決めてください。因みに、応援団長だけは事前にこちらで決めさせてもらいました」  ざわっと会場内が揺れ、そこで一息つき会長は生徒たちを見回した。  応援団長ってあれだよな? エール交換したりする長ランの。かっこいいけどめっちゃ大変そうだよな~。まあ三年から選抜するだろうし、俺には関係ないんだけどさ。 「はい、静かに聴いて~。赤組、三年A組軸谷―。白組、三年B組榎本―。異議申し立ては却下」  どよどよと会場全体が揺れている。その中で椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がった人物が。 「っざっけんなよ! 大野――――っ!」  おお、後姿も凛々しい。言わずと知れた浩司先輩だった。 「異議は認めない、と言った筈だよ軸谷。去年も応援団員でここに来ているのは限られているんだ。その中で団長が出来るのは君と榎本しか居ない。僕がそう判断したんだ。いいかい、やれるのは君たちだけだって言ってるんだよ? やってくれるよね。てか、やらないなら本校に送り返す」  しんと静まり返った中、冷静に生徒会長が説明する。  つまり、昨日みっくんが言ったとおり二年三年は全員サポート要員で、ここで自分が出来る役割をこなさなければならないんだろう。志願してきたなら割り振られた仕事はこなせとこういうことなんだろうな。  浩司先輩も冷静になってみたら納得せざるを得なかったのか、「くそっ」と吐き捨ててからどかっと腰を下ろした。  あーあ、また見えなくなっちゃった……けどかろうじて頭のてっぺんの辺りだけは視界に入る。俺は嬉しくてそこだけ凝視していた。  浩司先輩の団長姿か~。想像しただけでかっこよすぎて本物を見た日には何も手につかなくなりそうだ。  隣の席から携が肘鉄をくらわしてきて、ハッと我に返ったときには式が終わっていた。 「──涎……」  呆れた声で指摘され、俺は慌てて手の甲で口の周りを拭った。

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