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第42話 やっぱりそのつもりですか

 自分の部屋だというのに何故かベッドの上に正座している俺。  床じゃないだけ有り難いと思うべきなのか、対面の智洋のベッドにはどっかと腰掛けたベッドの主が自分の膝に両手を突いて半眼で俺のこと見てるし、その脇には仁王立ちになった携が腕組みして見下ろしているしで生きた心地がしない。 「んで? どうしてそうなったんだか詳しく説明してみろよ」  沈黙を破って智洋が口を開き、俺は戦々恐々としながらさっきの経過と、ついでに自分の考えも話した。その間二人は黙って聴いていたんだけど、俺が口を閉じると一拍置いて揃って特大の溜息をついた。 「和明ってほんと……」 「いやそこがいいとこなんだけど……」  疲れたような顔をして空を仰いで。いや、室内だから空はないんだけども。  二人とも息が合ってるなあなんてほわーっと見てしまう。 「あのな、和明。口説いてきた相手と二人で遊びに出掛けるって世間ではどういう風にとるか判ってっか?」  智洋が顔を戻してもう一度俺の目を見た。 「えと、でも俺たち男同士だし? あれは周がからかっただけでさ、あの後は普通にしてるから只の友達じゃん」  相手が女なら、カップルに見えるかもしれないけどさあ。  いくらここでは身長低くても、世間一般ではまあ平均的だし、どう見ても俺流石に女には見えねえし? 「いいや、お前がどう思ってようとあっちはデートのつもりだろうぜ」 「えーっ、智洋勘繰り過ぎだろ」  まっさかあーと笑って見せたら、携もふるふると首を横に振った。 「谷本は和明が思っているような単純なやつじゃないよ。昼間は完全に猫被ってると見るけどね、俺は」  うんうんと頷く智洋。 「まあこの際周りの目は置いとくとしても、だ。例え出掛ける先が人の多い場所でも、知り合いが誰もいねえ所で何かされたらどうするつもりなんだ?」 「な、何かって?」  こないだの視聴覚教室みたいなことは、流石に他の場所では出来ないと思うんだ。 「例えば……トイレとか、密室だし」 「トイレー? 学校でなら一緒になったことあるけど」  ええ? あれもヤバかったのか?  ああっ、智洋が呆れた顔して……うええっ。 「あー……百歩譲って授業の合間のトイレはいいとしよう。他のヤツも利用するし、時間もないしな」 「時間?」 「他に誰もいなくて個室に連れ込まれたらどうすんだって話」 「どうすんだって言われても……」  個室って言ったって、トイレだよ? しかも家庭のと違って店の個室ってかなり狭いじゃん。障害者用のスロープ付いてるのは別として。あんな狭いトコ男二人で入ってなにすんだよ。するもなにも身動きとれないだろ。  想像してみて、体が密着する? のはちょっと問題ありか? なんて唸っていたら、今度は携が口を開いた。 「まあ取り敢えず、今回はもう今更約束を反故にも出来ないだろうし、俺たちが見張るしかないだろうな」 「み、見張るって……」 「適当に変装して、見失わない程度に離れて付いていくよ」  にこって笑い掛けられましたが。 「あー……それしかないか」  智洋も同意して頭掻いてるし。 「勿論和明は俺たちはいないものと思って普通に行動してくれてていいからな。よし、んじゃちょっと外出許可願い取ってくるわ」  俄然やる気が出たのか、智洋はベッドから立ち上がるとさっさとエントランスに向かって行ってしまった。  まあ……この場でああだこうだと説教され続けるよりいいんだけど。  いいのか? これで。 「和明、風呂済んだらまた俺のトコ来いよ」  首を傾げてドアを見詰めている俺に、携から声が掛かる。 「ん? うん」  別に予定もないので軽く頷くと、やたらと嬉しそうだった。  なんだろなー……?  その後は、あっという間に戻ってきた智洋に用紙を渡されて、それを持って携は自室へ帰って行き、俺も机で記入してから着替えを持って大浴場に行った。  念の為確認したけど、やっぱり智洋は一緒に行かないらしい。なんなんだ……ちょっと気になる。  そういえば携とも一緒に入ったことないなあなんて改めて思いながら入浴を済ませ、今度は一度部屋に帰ってちゃんと智洋に断ってから携の部屋に向かった。

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