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第57話 そこもかよ!?
「あ、痛かった?」
背後から声を掛けられるも、手は止まらない。
そ、そんなとこもなのかよ……っ!
抗議したい声を封じ込め、緩く首を振って否定する。
携のあの綺麗な白い手が俺の汚い場所に触れているかと思うだけで、動けるものなら脱兎の如く逃げ出したい。
皺を一本一本伸ばすかのように外から中へと丁寧に解していく指先。
見えないのも恥ずかしいけど、これで顔突き合わせてたら羞恥で死ねるかもしんない。
くるりと入り口をなぞった指先がまた侵入してつい力が入ってしまい、指を締め付けてしまう。
「力、抜いて?」
もう片方の手で腰から上へと撫でられて、宥められるように力を抜くと、指先がもう少し差し込まれて中を探るように動いていく。
「ん、ぁっ」
流石にもう声が堪え切れなくて、そんな自分の声聞きたくないんだけど力を抜くためにも息と一緒に吐き出すしかなくて……。
「いいよ、声出しといて」
なんだか携の声も艶っぽいのは気のせいか。
つか、下に押さえつけられているというのになんでかムスコさんが元気出してきてるんだけどっ。ば、ばれたら恥ずかしすぎるんですけど!
そんな俺の心中を知ってか知らずか、体を仰向かされてしまう。
えっ、指入れたままじゃないですかー! やだーっ!
なんかもうその異物感にも結構慣れてしまった感じで枕を頭の後ろへと移動されて片膝を折られる。指先が表側に近い場所に触れた時に、全身が跳ねてまた力が入ってしまった。
な、何? 今の。
当然気付いている筈の携はそこだけをゆっくりと撫でるように刺激し続け、ムクムクとムスコさんが反り返っていく。
「やっ、たずさぁ……駄目、だ、もうっ、」
なんでソコを撫でられて勃起するのかも解らず、俺はついに制止の声を上げて携の腕へと手を伸ばした。
「大丈夫。イキたくなったらいつでもイって?」
ふわりと微笑んだ顔はいつも通りで。
良くないんだろうけど……前にもされてるし、いいのかなって思ってしまう。
ゆるゆると中を撫でられながら、もう片方の手がそそり立つ中心に添えられて連動して扱かれる。
流石にもうこれはマッサージの域を超えてるでしょ、なんて頭の片隅で思いつつも、俺は快楽に負けて吐精してしまった。
ぐったり放心状態の俺をよそに、携はせっせとティッシュで拭き取り濡れタオルで仕上げ拭きまでしてくれた。オイルは香りによる効果もあるからとそのままにしておいた方が良いらしく、若干皮膚に違和感を残したままスウェットを着る。
先刻のはまあ疲れる行為だったとはいえ、全体的には体のあちこちがスムーズに動くようになったように感じ、俺は裸足のまま床に足を突いてみた。今度はいけそうな気がする。
携の見守る前で徐々に体重を足へと移して、思い切って膝に力を入れてえいやと立ち上がった。
「あっ!」
「良かった~」
ほうと息を吐く携の方へ踏み出して腰が砕けないのを確認して、ゆっくりと部屋の中を歩いてみる。
さっきまでのは何だったのかというくらい普通に歩けて、嬉しくて堪らない。
「携ってやっぱり凄えな! ホントにありがとう!」
うんうんと頷きながらにこやかに俺を見つめてくれている親友にぎゅっと抱きついた。
「心因性のものだったのかもだな。効き目があって良かったよ」
いつものように髪を撫で付けてくれる手の平。優しくて安心する。
安心したと自覚した途端に、ぐうーっと腹が鳴った。
あ。
「まだ間に合うから食堂行こっか」
ここで噴き出さない携もいつも通り。
夕飯そっちのけでマッサージしてくれていたんだとようやく気付き、申し訳なさに身が竦む思いだった。
閉店間際の店に入る時の気まずさを感じながら、賑わいの消えた食堂のドアを開けた。出入りの多い時間には開放してあるものだけど、流石にぎりぎりの時間なだけあり閉じられている。
入ってみると、いつも配膳をしてくれているふくよかなおばちゃんが、使用済みのテーブルを台拭きで拭きながら椅子を上げているところだった。
「大丈夫ですか?」
まだ一応時間内とはいうものの、やや控え目に携が確認し「勿論大丈夫だよ」とおばちゃんは頷いた。
「暇だからついつい掃除を始めちゃってて悪かったねぇ。ゆっくり食べてっとくれ」
手招きされて配膳台に向かうと、さっさと中に引っ込んだおばちゃんが汁物などを温めなおしてから出してくれた。
今日も具沢山の味噌汁に、鰆の照り焼き、酢の物、ひじきの煮物と和定食になっている。
トレイを持っていざ座ろうと食堂内を見回した時になって初めて、他にも食事中の人がいたのに気が付いた。半分片付けられている椅子に隠れて見えにくくなっていたんだろう、奥の窓際からこちらをひっそりと見ている周と、クラスメイトの難波辰文 だった。
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