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第67話 おねーさま!不法侵入です!

 狭い庭に駐輪してもらい、二階へと上がる。  自分の部屋に友達が来るのいつぶりだろう。まだ散らかしてなくてよかった! 自宅にいた頃は脱ぎ散らかした服とか読みかけの雑誌とか食いかけの菓子の袋とか散乱してて、いつも母親と姉貴に白い目で見られてたんだもんな。  寮では共同の部屋って認識があるから綺麗にするようにしてるんだ。智洋に嫌われたくもねえしな。  二十インチのテレビにゲーム機を繋いでから、さて何か飲み物でも取りに降りようと腰を上げるとノックの音。 「はーい」  母親が気を利かせたかと思えば姉貴だった。いつもの他人向け優等生スマイルで、お盆の上に布巾とグラスが三つとプリッツが入った細長い皿が載っている。フレッシュがあるということは飲み物はアイスコーヒーらしい。 「いらっしゃい」 「「お邪魔してます」」  振り向いて声を揃える二人の前に屈み、小さな丸テーブルを拭いてからそれらを置いていく。 「二人とも同じ学校の人? 今まで会ったことないよね」  給仕が済んでも立ち去る気配はなく、お盆を膝に置いたまま二人を交互に見て微笑んでいる。 「そう、星野原の寮で同室の智洋と同じクラスの辰史」  改めて俺が紹介すると、二人はぺこりと頭を下げた。 「で、これが姉の裕子」  不要だと思うけど一応名前も教えとくことにする。勿論他人が居ないところで「これ」なんて言ったらぶっとばされるけどな! 「そうなの~携くんもだけど、ホントレベル高いわ。良かったら晩御飯も食べていかない?」  前半、本人の前でいうべき台詞でしょうかお姉さま。 「あー、いやそれはちょっと」  申し訳なさそうな智洋に、 「遅くなっても晩御飯は残しておくって親に言われてるんで」  にこっと笑って続ける辰。  だよなー。特に辰は朝から出掛けっぱなしじゃあ叱られないか? 折角の帰省なんだから。 「残念。じゃあまたゆっくり遊びに来てね」  とびきりの営業用スマイルで締めると、姉貴は静かに退出して行った。  擦れ違い様、親指を立てて「グッジョブ!」と囁かれたのは秘密だ。ホント面食いなんだから。  二時間ほど三人でゲームをしたり喋ったりして過ごし、明日はボウリングに行こうと約束して二人とも帰って行った。  智洋は隣町だけど辰は隣の市だからちょっと遠いらしい。まあ、バイクだから大丈夫なんだろうけど。  智洋がいるから遠慮したけど、今度二人の時に浩司先輩のこと色々聞いてみよう。俺の知らない夜の顔とか、知ってるんだろうな。  晩御飯を食べながら、姉貴に二人が写っている写真を所望された。  んなこと言っても、辰はクラス写真に写ってるけど智洋のはねえよ。  使い捨てカメラ渡されたけど、フィルムなくなるまで撮って来いってどんな横暴ですか!  なんて言って頼むんだよー。  もう少ししたら体育会あるから、その時なら記念にとか言って撮らせてもらってもおかしくねえかなー?  土曜日で、姉貴が通っている本校の方も普通に授業あるから観に行けないのが悔しいとか言ってた。  風呂に入った後、こっそり持ってきていた応援団のビデオを自分の部屋で再生してにまにま笑っていると、いつの間にか姉貴が部屋に入ってきて後ろでこっそり見ていた。  気配を感じて振り向いたらギョッと飛び上がりそうになったよ!  これがアダルトビデオとかだったらどうするつもりだよ! 人権侵害だ! 不法侵入だ!

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