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第96話 辰の顔をまともに見られないよ
しかもいくら体格差あるとはいってもやっぱり自分の方が小さいのは恥ずかしいし、尻込みする。
うん、一番の問題はソコだろう。
「ほらー、脱がせちゃうぞー」
楽しそうに俺のハーフパンツに手を掛けてきたよ!
「ま、待って……! 脱ぐー脱ぎますってば!」
慌ててしまって、座ったまま一気にずり下ろして脱ぎ捨てた。羞恥心も脱ぎ捨てた! Tシャツは着たままだから辰より恥ずかしくねえはず!
意を決して、携のときみたいに辰の腿の上に足を載せて、股間が近くなるように跨ってみる。いきなりそこまでしたのに驚いたらしく、辰の方が目を見開いた。
へへーんだ! たまにはそっちが驚け。
ちょっと勝った気になって余裕が出てくる。そのまま自分から顔を寄せてちゅっと唇を吸ってみたら、辰の白皙の美貌がうっすら紅潮していくのが判った。なんか知らないけど……余は満足じゃ! てな感じです俺。
ああ、ごめんなさい。余裕ぶちかましすぎました。
その後の辰が激しくて。
ええもうなんていうか、手で竿は蹂躙されるわ、なんでかいつの間にやら後孔まで弄られるわ、口内はなんだか強姦された気分になるわで。
散々にイかされまくり、それでも事後にちゃんと辰がお湯で濡らしてくれたタオルで拭いてくれて。泣いた跡とかも判らなくなるくらいに気分は上昇したものの、やっぱり最後には負けた気分になって点呼にギリギリ間に合うように部屋に帰り着いたんだった。
って……やっちゃってからナンだけど。いいのかな、こんなんで。
辰はどこ出身だったか聞いてねえけど共学だった筈で……抜きっこ?平気なのかなあ。携のとはちょっと違うっぽいような。ううん……。
布団の中で首を傾げながらも、すっきりしたのでいつの間にか眠っちゃった俺。
大野会長にも辰にも感謝!
智洋は「おかえり」以外に何も言わなかったから、携はここにはこなかったみたいで。それはそれであのシャールさんとずっと部屋の中でいちゃいちゃしてたのかと思うと何か悔しいというか悲しいというか切なくなったけど……。
もう、どうしようもない。
日曜日、通常通りテニス仲間とコートに向かう智洋を見送ってから、さてどうしようかなと考える。まずは月曜日の予習をやろうと手をつけたものの、古文はもうやる気が出ない。あのページを開くのすら嫌な気分になるから、他の教科だけさらっと流したものの、なんだか集中できない。
ちょっと外出てみようかな。
ベランダに出てみると、丁度シャツ一枚で日向にいると心地良いくらいの快晴。ぽっかり浮かんだ白い雲と、高いところを円を描いて舞っているとんびが見える。獲物探してるのかなあ。この辺のとんびって何獲ってるんだろう。近くに川があるなら魚なんだろうけど、山の中に入ればウサギとかいるのかな。
一人で出歩くとまた智洋にも周にも心配掛けるし、手摺に肘を突いてぽやんと周りを見回していると、悩んでた自分が凄くおかしくてどうでもいい気分になってくるから不思議だった。
緑の癒し効果かな~……。街中じゃなくて山の中に学校があるって、精神衛生上はいいんだろうな。散歩とかしたら、リラックス出来そう。
携は今何してるのかな。今日も執行部に行ってんのかな。
気にはなるけど……行ってみて、またあの人と仲良くしてたらイヤだ。
そんな風に携の行動に不満を感じる自分がもっとイヤだ。携もシャールさんも何も悪いことしてないのに、勝手に俺がイライラして寂しくなって、そんで泣いて会長と辰に迷惑掛けて。
もうこんな自分、どっか行け! はずかし過ぎるから!
手摺から肘を外すと、両手で握り締めてそのまま体を後ろに引いては屈伸したり背中を伸ばしたりとストレッチした。
うん、体動かすって気持ちいいな。明日からでも遅くないから、朝早く起きてジョグしよう。智洋も誘ってさ。
今すぐにでも外に飛び出して行きたい気持ちを抑えて、室内で出来る筋トレを色々やってみた。
大臀筋、中臀筋あたり集中的にして、スクワットして腕立てして。動きながら筋肉に意識を集中させるのがいいって習ったから、他に何も考えなくて済む。思いつくままに試しているとあっという間に食堂に行く時間になった。
智洋が帰ってくるのと食べ終えるのと入れ違いみたいになっちゃって、また早目に遊戯室に向かう。入った途端、中に居た辰と目が合っちゃって。勿論いつも通り先輩たちも撞いてたんだけど、いち早く気付いたのが辰で。瞬間的にボッと音がしそうなほどに赤面しちゃってた。
「あれ、カズくんどうしたの」
「具合でも悪いのか」
金髪王子と浩司先輩にも見られてしまった。うわあっ。
いますぐ回れ右して出て行きたい……。
「な、なんでもないです……っ」
見ないでー! て叫びたい。けどそれはあまりにも変だから、視線を外して俯き加減にじりじりと壁際に寄って行く。
静まれ! 心臓! 早く顔色戻れ!
なんていうか、昨日のあれやこれやがですね……そう、キスとかね、思い出さなくてもいいようなエロい顔とか辰の顔見たら瞬間的にパーッと思い出しちゃって、ついでに自分の失態も思い出してすっげー恥ずかしくなったわけで。
だって、ぐしょぐしょの泣き顔も、いくときの情けない顔も、普通は他人に見せないような場所も全部全部見られて。ここに来るまでうっかり辰も来るかもしれないこと忘れてたなんて、なんという体たらく。
そうだよな、彼女と別れたから、帰省する必要ねえんだもんな。バイクで帰って、多分昨夜もあの後走りに行ったんだよな。
壁際に寄っただけじゃ飽き足らずに壁にぺったりと張り付いて、額をコルクの壁に押し付けて唸っていると、当然のように三人とも寄ってきちゃって逃げ道がない感じで囲まれてしまいました……。
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