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第117話 囚われの身
陵辱シーンなので苦手な方はご遠慮下さい。
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「わっ、ごめん」
咄嗟に謝りながらも、もしかしてさっきの奴らかと一瞬焦る。けれど次の瞬間には体格が全然違うことに気付き肩の力が抜けた。
「こっちこそごめんね、入り口だもんね」
目を丸くして足を止めているのは、隣のクラスの川上だった。あの手紙の件で顔と名前は憶えたものの、特に話なんかはしたことがない。
じゃあと歩き出そうとする俺の服を、川上が引いた。
「大丈夫? 具合悪いなら医務室について行こうか」
俺の顔色が悪いことに気付いたらしい。
首を横に振って苦笑する。
「いや、いいよ。腹の具合悪かっただけ。出すもの出したから、部屋に帰るな」
「そっか、もう全部出た? すっきりした?」
意外にはっきり訊いてくるなと驚いて、うんと頷く。
「良かった」
満面の笑みを向けられて、あれ、と何かが引っ掛かる。
「じゃあ、ちょっと付き合ってもらいたいんだけど」
ぐいと腕を引かれて、部屋と反対方向へと引っ張られた。たたらを踏んでから、勢いに負けてそっちに数歩踏み出す。
体格的に同じくらいだけど、平常なら多分俺の方が力は強い筈。だけど今は何処にも力が入らず、わけが解らないまま数メートルを腕についていく形で体が移動して、それから不意に内側から開いたドアの前で思い切り胸を押された。
「わっ!」
小さく悲鳴を上げて、手を後ろにやり衝撃に備えようと動く体。
けれど床に付く前にガシッと背後を支えられ、両腕を曲げて背中で掴まれたと思ったら、驚いて開いた口の中にハンドタオルを突っ込まれた。
「んぐっ! ぅ!」
抗議の声は喉の奥に留まり、更にその上から布テープで口を覆われてもう何も漏れない。
後ろで捻りあげられた腕は肘を直角に曲げた状態で二本一緒に何かでグルグルと巻かれて行く。感触からして、口に使われたのと同じ布テープだろう。
ちくしょう! どっちもはがす時にいてえじゃねえか! 毛が抜けるだろ!
只でさえ薄くて男らしさに欠けるってのにつるつるだなんて気持ち悪いじゃねえかよ。
なんだか色々とショックなことが多すぎて混乱しているのか、一番どうでもいいことを考えているらしい自分。これが現実逃避ってやつなのかもしれない。
手際良く事が進んで行く間に、川上は内側からしっかりと施錠した。
最早助けも呼べず腕も動かせなくなった俺は、せめてもの抵抗として周りの誰かを蹴ろうと足をばたつかせたけれど、見えないけど最低三人はいる男子相手には無意味な行動だった。
あの手紙を渡してきた時にはおどおどとして不安そうで、ひ弱そうな印象だった川上が、俺の目の前で口角を上げて目を細めて愉しそうに笑っている。
わけわかんねえよ……!
なんで川上が俺にこんなこと?
それに、こうなってしまってから解る。さっきの奴らとはグルだったってことだ。
それにしても、全然知らない奴らにこんなことをされる謂れがない。問い質したくても喋ることすら出来なくて、今の俺を占めているのはただただ困惑と──これからされるであろう何かに対しての恐怖。
俺の顔を眺めている川上の眼差しは冷たい。それに──憎しみのようなものが感じられた。
その薄い唇がにたりと動く。
「ごめんねえ、霧川くん。僕、一方的にきみのこと大嫌いなんだ」
え? 俺、何かしたのか? 川上に。
覚えがなくても、傷付けてしまっている事はあるだろう。そういうのは解る。だけどそれなら理由をちゃんと聞いてから謝りたい。
そう思って何とか伝えたくとも、首を振るくらいしか態度で示すことが出来ない。目を見開いて必死に何かを伝えようとする俺を見て、ますます悦に入ったように川上は笑った。
「いいんだよ、謝って欲しいわけじゃないんだ。たださあ……」
川上はしゃがみ、ベッド下の引き出しから小さな瓶と、それから二十センチほどの管と注射器らしきものを取り出した。
「堕ちてきて欲しいんだよね、僕たちのところへ」
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