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第4話 映画鑑賞

「いとこが絵画展やるから、受付のアルバイトをすることにしたんだ。」 ハルマが言った。 「え?いとこ、芸術家なんだ。」 「うん。4歳年上で、中学生の時に、お父さんの仕事の都合でフランスに行って、その後すぐに絵で賞をとったんだ。そこからもう画家に一直線……みたい。」 「へええ。やっぱり才能って、あるんだねー。」 そんな年の時から自分の道がわかるなんて、なんだか羨ましい。 「受付バイト、いいじゃん。」 「1か月だし、土日祝日がつぶれちゃうけど……。」 「まあ、一緒に住んでるんだから、休みが合わなくても1か月なら大丈夫だよ。」 俺はそう単純にそう思ってた。 ――――――――――――― 「……先輩、毎週入り浸るの、やめてくれませんか?」 「だって……ヒビキがいなくて、寂しいんだもん。」 そう言いながら、カシワギ先輩が家に来てしまうのだ。 俺は飲食店でバイトを始めたが、平日も週末も夕方からの勤務で、この一カ月はハルマと過ごせなくなってしまった。 先輩は、近くの個人塾のアルバイトを始めて、やはり夕方からの出勤だ。 しかも、ヒビキさんは最近仕事やら付き合いやらで、なかなか時間が合わないらしい。 休日は、なんとなく先輩と出かけたり、ご飯を食べることが増えた。 今日は、DVD鑑賞だ。 受験生で、見るのを我慢してたやつがたくさんある。 「やっぱりお前はハリウッドが好きなんだな。」 「どういう意味ですか?」 「わかりやすい、正義の味方が好きなんだなーって。」 「いいじゃないですか。自分を乗り越える!的な。先輩も先生になるなら、そういうの好きなんじゃないんですか?」 「僕はね……現実はそう簡単じゃないよな、って思っているから、なんかこう、割り切れない感じの話が好きかなぁ。」 「繊細なんですね。」 「リョウスケみたいな単純スケベではないね。」 「この流れでスケベは余計じゃないですか?!」 そんな話をしているうちに、本編が始まった。 「ポテチ食べる?」 「あ、はい。」 先輩がポテチを一枚取って、俺の口に入れてくる。 本編は主人公の生い立ち、ヒロインとの出会い、決戦……と、お決まり通り進んでいく。 途中で先輩は、俺の肩にもたれて寝てしまった。 よくこんな爆発音だらけの映画中に寝れるな、と思いつつ、脇に置いていた膝掛けをとって掛けようとした。 チラッと先輩の寝顔を見る。 これがハルマなら、チューしちゃうんだけどな。 そう思ったとき、先輩が俺の肩を引き寄せて、キスをしてきた。

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