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第5話 ついつい
初めてのことじゃないとついつい……
先輩の唇に色々絡めとられる。
舌先が触れ合って、ゾクッとする。
でも……
相手は先輩だから……
そっと離れる。
「……寝たふりですか?」
「……いや、寝てた。」
ホントかなぁ。
俺が座り直すと。先輩は俺の太ももに頭を乗せた。
膝枕になった。
「バイト行きたくない。」
「大変なんですか?」
「大変じゃないけど、こんだけまったりしてて、それから働きに行く……って、面倒臭いんだよね。いざ行っちゃえば、楽しいんだけど。」
「まあ、わからなくはないですね。お金あったら、働かないですし。」
自分も働くこと自体は嫌いじゃないが、やっぱりゆっくし過ごしたい気持ちはあった。
「ハルマ、絵画展の受付だっけ?」
「そうです。」
「画家に見初められて、ヌードモデル頼まれたりしたらどうする?」
「まさか!画家は、いとこらしいんで、大丈夫じゃないですかね?」
「さあ、どうだろうね。」
そう言ったきり、先輩はまた眠ってしまった。
――――――――――――
ハルマはバイトからアパートに戻った。
リョウスケと入れ違いだ。
電気を点けて中に入る。
残ったグラスを見ると、二人分ある。
お菓子も、片付けてはあるが、半端に手がつけられたものがいくつもある。
リョウスケ一人では、こんな食べ方をしないだろう。
カシワギ先輩が来ていたのだ。
ハルマは胸が痛くなった。
リョウスケと先輩は、本当に何もしていないんだろうか。
リョウスケは前以上に優しくしてくれる。
愛されてるのは、わかる。
コップを手に取り洗う。
でも……
リョウスケは、たぶん、何人も同時に愛せる人なんだ。
そういう、器の大きいところを好きになったところもある。
もし、先輩と、関係があったらどうしよう。
先輩を恨んだりはしない。
たぶん。
でも、傷ついている自分に、耐えられなくなりそうだ。
コップを洗い終えて、洗いカゴに置く。
きっと、リョウスケに依存しすぎなんだ。
もっと、自分に友達ができればいいかもしれない。
シンクの泡が消えたのを見届けて、蛇口を閉めた。
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