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第7話 高級ホテル
レストランに入る。
「何飲みたい?」
「あ……何かジュースを……。」
「お酒はダメなの?」
「未成年なんで……。」
「そっか。フランスなら18歳から飲めるよ。残念だな。」
ジョルジは笑った。
食事はどれも高級そうで、美味しい気もするし、何でもないような気がする。
せっかく食べるなら、もう少し違う心構えで来たかった。
「ジョルジの絵、すごい人気だね。今日も、何人か契約していったよ。」
「うん。日本にも隠れジョルジファンはいるんだ。ようやく日本でも絵画展をやれるくらいになったね。」
ジョルジはワインを飲んでいる。
「酔い潰れる前に渡さなきゃ。ハル、大学合格おめでとう。これ、お祝い。」
ジョルジは細長い小箱と、小さな額に入った絵をくれた。
「俺の絵はね、困ったら売ればいいよ。それで10万円くらいにはなるから。」
「まさか!売ったりなんかしないよ。ありがとう、大切にする。」
「箱も開けてみて。」
開けてみると、綺麗な模様が入った万年筆だ。
「軸も、俺がデザインしたんだ。そんなに出回ってないから、売れば20万円くらいにはなるかな。」
「だから、売ったりなんかしないよ。」
お互いに笑った。
ジョルジの父親、つまりハルマの伯父は画商だ。
その影響でジョルジは画家の道に進んだのだろう。
フランスに行ってからはすぐに評価されて、今となっては現代アーティストの一人だ。
「ハルと、おままごとをしていた頃が、昨日のことのように思い出されるよ。」
なぜかジョルジはおままごとが好きだった。
ハルマが小学校に上がる前、ジョルジは小学校中学年だった。
ジョルジがお母さん役で、ハルマはお父さん役か子ども役だ。
思えば、その時からジョルジはよくキスをしてきた。
ほっぺの時も唇の時もある。
『ハルのほっぺは柔らかくて気持ちいい』と、よく言っていた。
「そういえば、そうだね。よくおままごとしてた気がする。」
「俺はね、本当はハルと兄弟みたいに暮らしたかったんだよ。帰る時間になると、ハルと離れたくなくて”ハルんちの子になる!”って、よく叫んだよ。」
ジョルジは楽しそうに話した。
「そうだったんだ。まだ小さかったから、そこまでおぼえてないな。」
ジョルジがフランスに行ってからは、親から多少話が出るくらいだった。
「あ、連絡先教えてよ。次は、ハルがフランスに遊びに来てね。」
「そうだね。いつか、行ってみたいな。」
お互いスマホを取り出して、連絡先を交換する。
「ハルは、今恋人はいるの?」
リョウスケのことを話すか少し躊躇ったが、フランスは同性婚ができる。
ジョルジなら、理解があるだろう。
「うん。相手は、男だけど。」
「へえ!日本人なのに、先進的だね。まあ、ハルなら、男だって虜にできるよ。」
「ジョルジは……結婚はまだなんだよね。」
「うん。今は女の恋人が3人いて、男の恋人が2人いるけど、まだ結婚は考えてないな。」
「す、すごいね。」
スケールが違った。
「恋人を1人と考えると争いが起きるじゃないか。みんな、好きな者同士、仲良くすればいいのさ。」
ジョルジはニッと笑って、ワインを煽った。
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