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第9話 ソファ
ジョルジにキスをされる。
ほのかに酒の香りがして、優しく唇で甘噛みされる。
首筋にもキスをされる。
熱い吐息がかかる。
「ネクタイ……外して?俺、普段ネクタイしないから、外し方がわかんないんだ。」
「いや……ダメだよ……。俺は、浮気はしない。」
「じゃあ、先にこっちから脱ぐ?」
ジョルジがハルマの股間をなぞる。
「だ、だめ……!」
ハルマは手で股間を守った。
「俺じゃダメ?」
「俺は、恋人としか、しないから……。」
「もったいない。そんなにセクシーなのに、彼一人しか楽しめないだなんて。」
ジョルジは甘いため息をつきながら微笑んだ。
文化が違うのか、ジョルジがおおらかなのか。
「それって、たとえば、今彼が浮気してたらどうなるの?」
「え……。」
「一途なのは自分だけで、彼が他の人とイチャイチャしてたら、自分もしちゃう?」
「それは……。」
別に、リョウスケ以外の人としたいわけじゃない。
「しないよ……。」
「おぉ……。素晴らしい純愛だね……。」
ジョルジは目を輝かせた。
「ハル、君をモデルに、絵を描いていいかな?」
「え?モデル?」
「ハルは、見た目にも、大人になる前の儚さといじらしさがあるんだよ。その美しさを描かせてほしいんだ。」
「ああ……まあ……いいけど……。」
「ありがとうハル!俺の新しい世界を開いてくれて!」
またジョルジはキスをしてきた。
――――――――――――
家に帰ると、リョウスケがDVDを見ていた。
「あ、おかえり。」
リョウスケは明るく声をかけてきた。
「ただいま。」
特に罪悪感は感じない。
ジョルジのは、ただの挨拶だ。
着替えるために寝室に入る。
ついつい、ベッドが変に乱れていないか見てしまう。
部屋着に着替えて周りを見ると、今日はリョウスケは一人で過ごしたようだ。
カレーが作ってあり、食器は洗い終わっている。
リョウスケが座っているソファの脇に座った。
リョウスケの隣に座ると落ち着く。
「いとこは元気だった?」
「うん。すごく人気画家になってて……羽振りも良かったよ。」
俺は、ホテルでの料理やプレゼント、スイートルームの話をした。
「……ハルマ……それって……。男が女をホテルに誘い込む手口まんまじゃん……。」
リョウスケが珍しく険しい顔をしている。
「まあ……そうかもね……。」
「何もされなかったの?」
「されてないよ……。」
半分、嘘だけれど。
「……次からは気をつけてね……。」
そう言って、リョウスケは俺の頭をなでた。
「そんな流れで言うのもなんだけど、絵のモデルをやることになったんだ。」
「え?!そうなの?!まさか……ヌードモデルなんじゃ……。」
「詳しいことは聞いてないけど、ヌードの時は断るよ。」
リョウスケは黙ってしまった。
いつもの、何か妄想をしている時の顔だ。
「俺も行く。」
「え?」
「俺もその場に行くよ。」
「え……あ、うん。ダメとは言われないと思うけど……。」
心配してくれてるんだろうか。
「もう、俺たちが付き合ってる、って知られてるなら話は早いよね!ハルマは、先輩の時みたいにちょっと油断すると大変な目に遭うから、俺がちゃんとそばにいるよ!」
そう言われて、ちょっと嬉しかった。
「……ありがとう、リョウスケ……。」
リョウスケの肩に頭を乗せた。
リョウスケが膝掛けをかけてくれる。
ふわりと香水の香りがした。
「……膝掛けから、先輩の香水の匂いがするね……。」
「え?あ、うん。貸したから……。」
こうやって、二人でDVDを見てだんだろうか……。
また複雑な気持ちになってしまった。
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