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第10話 アトリエ
ハルマは、ジョルジさんに俺の同席を頼んだ。
あっさりOKだった。
何か、策があるわけじゃないけど、ハルマ一人よりはいいだろう。
アトリエとして借りている別荘に行くことになり、マネージャーが迎えに来てくれることになっていた。
「こんにちは。私はエマです。ジョルジの彼女でマネージャーよ。」
自己紹介で度肝を抜かれた。
ハルマからは、彼女3人、彼氏2人がいると聞いていたが、まさか会えるとは思っていなかった。
エマさんは、金髪、碧眼、背が高くてかっこいい女性だ。
車は郊外に向かい、徐々に林の中に入っていく。
天気もいいし、日差しも温かい。
自然の中に入っていくにはちょうどいい気候だった。
「エマさんは……ジョルジさんにたくさん恋人がいて、やきもちはやかないんですか?」
つい、聞いてしまった。
恋人の人数が多いのは、なんだか羨ましい。
でも、ハルマに恋人がたくさんいたら嫌だな。
だって、ハルマのあんな姿が共有されちゃうんでしょ?
ダメだよ。
「やきもちをやく人もいれば、そうじゃない人もいるわ。私はあまりやかない方ね。」
「人によるのか……。」
「ジョルジは、いつでも目の前の人に全力で愛を注ぐ人だから。人数が増えたからって、愛が減るわけじゃないのよ。」
「愛がでかい……。」
そして、ハルマがそれぞれの恋人に全力で奉仕する姿を想像した。
やっぱダメだ!
ハルマはボーッと車の外を見ている。
全くもう。
人の気も知らないで。
車は、黄色に塗られた可愛らしいコテージに着いた。
車の音を聞きつけたジョルジさんが出てくる。
「やあ!よく来たね。さあ、入って。」
ジョルジさんは満面の笑顔だ。
「ハルマの……彼氏の伊藤リョウスケです。よろしくお願いします。」
自己紹介で、彼氏を名乗るのは恥ずかしい。
「うんうん。なるほど。君がハルを射止めたナイスガイだね。いい顔つきだ。ハルが好きになるのもわかるよ。」
そう言いながら、ジョルジは頬をくっつける挨拶に加えて、キスをしてきた。
「おわっ!」
聞いてはいたが、されるとやっぱりビビる。
「ははは。日本人には刺激が強いよね!」
笑いながら、ジョルジは中に通してくれた。
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