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第11話 メイク

ケーキと紅茶が出された。 クリームとシャインマスカットが輝いている。 紅茶は柔らかく、ケーキの甘さとマスカットの爽やかさをうまく引き立てる。 「なかなか美味しいケーキだね。君たちの甘さには敵わないけど。」 ジョルジさんはにやにやしてこちらを見ている。 「馴れ初めを聞いていいかな?日本で同性が付き合うなんて、難しかっただろう?」 馴れ初めを語るのは、恥ずかしかった。 なんせ、お互いの性欲発散のために、体の関係から入ったのだ。 「ええと、ハルマが告白してくれて……俺は当時ははっきり自分の気持ちがわからなかったんですけど、幼馴染だったんで、そのままずっと一緒にいる的な……。」 ハルマも頷いた。 「ハル、なかなかやるね。リョウスケ君は今ははっきりと、恋人だと認識してるんだね?」 「は、はい。ルームシェアも始めたし……。」 チラッとハルマを見る。 ちょっとはにかんでいるのが可愛い。 「この愛に溢れた若者たちに、神の祝福があらんことを!俺はすごく感動しているよ。」 ジョルジは天を仰いで言った。 「愛する人と出会うこと、愛する人と結ばれること、愛する人と生きていくこと。それは思いの外、難しいんだよ。性別が、年齢が、国が……などなど。自分に正直に生きられない人などごまんといる。そんな中で、君たちは人生の時間を無駄にすることなく、もはや相思相愛なのだ。素晴らしい勇気だよ。本当におめでとう。」 ジョルジは、握手を求めてきた。 何がなんだかわからないまま握手を返す。 「そんな君たちの、溢れる愛を描かせてもらいたいんだ。早速いいかな?」 「あ、はい。お願いします。」 そう返事したハルマを、エマさんが奥の部屋に連れて行った。 ハルマが残したケーキに手をつける。 「ああ、しまった!食べ終わらないうちに、話を進めてしまったね!」 「あ、いえ。ハルマは甘いものが好きじゃなくて、いつも半分残して、俺が食べます。」 「……やれやれ、想像以上に仲良しだ。楽しいね。」 ジョルジは笑った。 15分くらいして、ハルマが戻ってきた。 うっすらと化粧をして、髪が整えられ、白シャツに黒のチノパンだ。 全体的に色っぽくなっている。 「じゃあ、そこのソファに寝そべってくれる?」 横たわるハルマを、エマさんが動かしてポーズを取らせる。 それっぽい感じにはなるが、これが一体何を意味する絵になるのかはわからない。 「少年、を描きたいのだよ。性欲と純粋な愛のはざまのね。俺の周りは、少し歳をとってしまっているから、ハルくらいのモデルがほしかったんだ。あとは、女を知らない、という条件だ。」 「彼女がいたら、ダメなんですか?」 「ああ。俺の中ではね、女は魔物だよ。男を極端に強くするか脆くさせる。少年にはね、人間の儚さが内在している。明日のご飯のことなんて考えてないで、愛とは何かを永遠に悩んでいてほしいんだ。」 全然意味はわからなかったが、ジョルジは自分の中で納得しているようだ。 ジョルジ自身も、ハルマのポーズづくりに手をかけるが、イマイチ上手くいかないらしい。 「初めてだから、固いよね。わかった、リョウスケ、1時間あげるから、ハルとイチャラブして。」 「え?!イチャラブ??」 「あっちに客室があるから、自由に使って。メイクも服も、また準備するから、気にせずどうぞ。」 「いやいやいや、なんでそうなるんですか?」 「ハルが、君に愛されて、満足している様子をみたいんだ。世の中に、愛を忘れた人がどれだけいると思っているんだ?その人たちに、教えてあげるんだよ。愛し、愛される人はこんなにも幸せなんだと。」 「えええ。そうかもしれませんけど……。」 要は、1時間でエッチしろ、ってことですよね? 「君が来てくれて良かったよ。じゃあ、よろしく。あ、俺たちは俺たちで楽しむから。終わったら連絡してね。」 ジョルジはエマとコテージを出て行ってしまった。

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