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第17話 浮気

「なあリョウスケ、浮気って、何でできるの?」 「……なんで、俺に聞くんですか?」 「お前は、ハルマという恋人がいながら、タツオミをその気にさせて、僕とはキスもするしヤッたじゃないか。お前なら、浮気がなんたるかがわかってるんじゃないかと。」 「人聞きが悪いですよ!タツオミは、タツオミもちょっと悪かったし、先輩はもっと悪いから、色々仕方なかったんです!全体的に”事故”です!」 今思えば、高校時代は性欲がいきすぎていた。 それは認める。 先輩は今日も入り浸りに来た。 ハルマはモデル業で夜まで帰って来ない。 「先輩がそんなに浮気を気にするなんて……響さんに何かあったんですか?」 「……最近、帰りは遅いし、休日も出払ってるし。ホント、一緒に過ごせてないんだ……。別に、もし誰かと浮気してても、それはしょうがないんだけど……僕の、何がいけなかったかな、って。」 「意外ですね。先輩は、相手の浮気を許さなそうだし、相手を責めるんじゃなくて、自分を責めるんですね。」 「気持ちは変わるからさ……。それなら、あとは自分がやれることを頑張るしかないじゃん。」 先輩は、俺の前では意地悪でエロい人だけど、根は恋愛も真面目なんだ。 「きっと、先輩と正反対な人が現れたとか。」 「たとえば?」 「清楚で、奥手で、俺がいなくちゃダメだな!って、思わせるような健気な人。」 「僕だって、健気だよ。」 「先輩は、エロくて、計算高くて、そういう意味で響さんが必要な人です。正確に言えば、必要なのはお仕置きですけど。」 「お前が言うほどエロくないよ。響はさ、あんまり性欲がないのか、なびいてこないんだよ。いつもあっちのペース。ホント、おあずけが辛い。」 先輩の悶々としている様を見ていると、普段振り回されている分、少し気味がいい。 先輩はちょっとくらい欲求不満な方がかわいいよ。 「……なんだよ、なんで笑ってんの?」 「あ、いや、ホントに、響さんのこと好きなんだなって。」 二人の様子を想像する。 きっと、響さんに先輩がじゃれついても、あっさり対応されて、先輩は拗ねた犬みたいになってるんだろう。 それですぐ響さんに可愛がられるならいいが、それが1カ月も放置なら、さすがに拗ねるだけじゃ済まなそうだ。 俺のスマホが鳴った。 たくさんメッセージが届いている。 開くと、ジョルジさんからの画像だ。 表示まで時間がかかる。 「仕事が忙しいのが落ち着けば、変わるんじゃないですかね?」 「……そうだよな。」 案外、先輩は素直な返事をした。 先輩は一途な人なんだ。 今は響さん一筋なんだろう。 響さんだって、仮に何かあったとしても、それは絶対事情があるはずだ。 響さんが簡単に先輩を裏切るはずはない。 画像が表示された。 ハルマの写真だった。

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