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第22話 先輩の涙

警察官になりたい俺は、大学で法律の授業をとっていた。 その授業を、響さんがやっていたのだ。 響さんはバイトで予備校講師をやっていたから、授業はとてもわかりやすい。 今日は、もう一人アシスタントが来ていた。 名前を呼んでいるのを聞くと、八神さんというらしい。 こちらもイケメンだ。 八神さんは…… もしかして…… 響さんが好きなのかもしれない。 なんとなく、見つめている表情とか、距離感でそう思った。 こっそり写真を撮る。 先輩に教えようか、迷った。 先輩が知ったところで、社会人相手じゃ何もできないだろう。 八神さんが浮気相手と決まったわけじゃないし……。 と思いつつも、この間、ハルマを怪しいバイトに送り出したんじゃないかと言われてムカついたことを思い出した。 先輩にも、少しやきもきさせてやろう。 それくらいの軽い気持ちで、メッセージと写真を送った。 ―――――――――― …… ……… ………… 気づいたら、俺は、先輩とベッドに寝ていた。 部屋は、先輩の家だ。 先輩は横でぐっすり眠っている。 八神さんの画像と共に先輩にメッセージを送ったら、すぐに返事が来た。 響さんから、”今日は遅くなる”というメッセージもほぼ同時に来ていたらしい。 『やっぱり、その八神さんと浮気してるのかな……。』 そういうメッセージと、泣きのスタンプが来た。 先輩は、メッセージになると、女の子のように可愛い言葉やスタンプが多くなる。 そのせいか、俺の中に小さな罪悪感が生まれた。 『寂しかったら、今日おうちに行ってあげてもいいですよ?』 と、半ば冗談で送る。 恋人が浮気してるかもしれない中、冷たい部屋に一人は寂しいんじゃないだろうか。 別に、先輩一人でいたいならそれでも。 そしたら、先輩から、近くのラーメン屋に行こう、と返事が来た。 夕飯をそのラーメンで済ませたあと、先輩はスーパーに行って、大量にお酒を買い込んだ。 「ちょ……大丈夫ですか?」 「夜が長いと寂しいから、酔って寝ちゃえばいいんだよ。付き合ってくれるよな?」 発想が、アル中では? そして、先輩の家で飲んだ。 先輩のペースは早かった。 俺はまだ未成年だけど、ちょっとだけ飲んだ。 ジュースみたいだ。 「なんで僕の好きな人って、誰かにとられるんだろう……。」 ハルマと、響さんのことだ。 「特に、ハルマなんて、こんなリョウスケの、どこがいいんだろう。」 こんなリョウスケって、何だよ。 「僕さぁ、好きになったら、チューとか、ハグとか、いっぱいしたいんだよ。なのに、響はね、興味ないの、そういうイチャイチャに!逆にセックスがなくてもいいから、イチャイチャしたい……。」 意外だった。 先輩はイチャイチャが好きだったのだ。 なんか可愛かった。 そして先輩はついに机に突っ伏して、動かなくなった。 俺は空いた酒の缶やビンを片付けて、持ち帰ることにした。 こんなに空き缶があったら、響さんが心配するだろう。 片付けた後、先輩を抱き起こして寝室に連れていく。 ベッドに寝かせたが、先輩もなかなか重くて、一緒にベッドに倒れ込む。 「響……。」 先輩は、そうつぶやいて、俺をがっちりホールドする。 抜け出せずにもぞもぞしていると、先輩の顔が近づいた。 先輩は、ちょっと泣いていた。 俺がギュッと先輩を抱きしめると、先輩もさらに俺を抱きしめてきた。

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