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第26話 響の帰宅

夜中に帰宅する。 部屋は酒臭い割に、きちんと片付いていた。 冷蔵庫を見ると、一人では飲みきれない量の酒が入っている。 寝室にいくと、湊が眠っている。 キングサイズのベッドの真ん中だ。 普段の湊なら、この位置には寝ない。 布団をめくると、外に着ていく上とスウェットのズボンでバラバラだし、履いていたであろうジーンズは、きちんとたたまれて置いてある。 湊は珍しくいびきをかいているし、口も酒臭い。 冷蔵庫の飲みかけの酒瓶からすると、湊は相当飲んでいる。 俺が借りている部屋に、宅飲み相手に湊が招くならリョウスケ君だろう。 これだけ泥酔した湊なら、自分で片付けはできない。 リョウスケ君なら、やってくれるだろう。 ゴミ箱を見る。 漁るつもりはないが、いつもよりティッシュのゴミは多い。 薄々、湊がリョウスケ君とよく会っているのには気づいていた。 俺が構わないからだ。 逆に、相手がリョウスケ君だから安心できたところがあった。 それは、リョウスケ君は湊に手を出さないだろうという意味じゃない。 リョウスケ君になら、湊を抱かれてもいいという意味だ。 俺は、リョウスケ君に一目置いている。 湊の危ういところ。 この寂しさだったり、人恋しくなりやすいところを、リョウスケ君ならうまく対応してくれそうだと思っているのだ。 湊とリョウスケ君に、勝手に期待して申し訳ないとは思っている。 湊の額にそっとキスをした。

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